マーケティング部門に必要な人材は?
次に、マーケティング部門にどんな人材が必要かが語られた。組織の視点で見れば適材適所が一番だが、そのためには一人ひとりのマーケターの資質を理解しなければならない。また、マーケターとしても自分の資質を知り、どの方向性に進んでどんなスキルを伸ばすべきかを知っておきたい。ここではマーケターの視点から、タイプや資質について鈴木さんの考えが示された。
まず、マーケターとしての方向性には2種類ある。専門職としてのマーケターには、業種別、職能別、機能別のスキルセットが求められる。経営者としてのマーケター(CMO)には、創業期、成長期、成熟期という段階でリーダーシップを執る役割が求められる。どちらを目指したいかで、マーケターとして学ぶべき領域も違う。経営者としてのマーケターを目指しているのに広告運用のスキルばかりを伸ばしても、目標には近づけないということだ。
また、資質には3種類ある。知能指数(IQ)は、思考力や問題解決力、創造性。感情知能(EQ)は、コミュニケーション力や人間関係構築の能力。そしてコントロール指数(CQ)は、冷静さや実行力、リーダーシップなど自分を統御する能力。

個々人で得意なことや資質が違うので、自分がどうなのかを知ることが大事だ。鈴木さんは森岡毅氏の『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」(ダイヤモンド社、2019年)』で書かれていた内容を紹介した。
「同書の中では、戦略思考が得意なら、「Think」を担うTタイプ。人間関係を構築するのが得意なら、「Communication」を担うCタイプ。実行力に自信があるなら、「Leadership」を担うLタイプ。これらのTCLで自身の特性を見極めるべきだ、としていました。私もそれに共感しています」
これらのタイプによっても進むキャリアは異なり、必要とされる状況も違う。組織としても、これらを把握して人材を配置しなければ望んだ結果は得られないだろう。
求められていることを見極めて自分の立ち位置を決める
最後に、鈴木さんからマーケティングの現場とマネジメントに関してアドバイスが送られた。
何より、自分が所属している企業や組織がどういう状態にあるか知ることが第一。そして、次の段階に進むために何が求められているかを理解しなければならない。それを見極められたところで自分の立ち位置を決める。ずっと同じことをしていては企業も自身も成長しないのだ。鈴木さんは長くニューバランス ジャパンに勤めているが、それは企業が成長する過程で仕事も変えていくことで、成長を実感できてきたからだという。

創業期のチャレンジが好きな人、0から1を作るのが好きな人、大きな組織を効率化したい人など、得意なことや目的・目標はそれぞれ。だからこそ、自身が持つ強みを今の組織にどう活かせるか、どういう仕事や貢献にわくわくするかが大事だと鈴木さんは強調した。