統合マーケティングを実現するための組織変革とは?
関係者全員でビジョンを共有したことで、皆が同じ目線で議論できるようになった三井住友カード。原氏はここで、組織の再編に着手し始める。
具体的には、ブランド・コミュニケーション・アクイジション・プロダクトと目的別に4つの分科会を組成。メンバーには広告宣伝、マーケティング、営業に加え、経営企画の社員も入った。各分科会にはプロジェクトマネージャーを設置し、その配下にはリーダー職を設けた。分科会の運営はリーダーが中心となって行い、プロジェクトマネージャーと連携しながら、方針を決めるという流れを形成した。
このリーダー、たとえばプロジェクトマネージャーが広告宣伝部門の人間なら経営企画部門のメンバーを選ぶなど、別部署の人間が入るようにしたという。ここが「分科会組成の上で一番のポイントになった」と語る原氏。どのような狙いがあったのだろうか。
「従来の縦割りの組織体系から脱し、組織の融合を促進するためには、人材をシャッフルしなければいけないと感じていたからです。『いきなり人材を入れ替えて大丈夫か?』と思うかもしれませんが、事前にビジョンの共有を入念に行ってきたので、その点は問題ありませんでした」

そして、分科会の週次ミーティングには基本的に全プロジェクトマネージャーが出席。さらに、日々ランチなどでのコミュニケーションも欠かさないようにするなど、各チームがうまく機能するよう取り組んできた。
ある程度プロジェクトチームが組成できた段階では、外部講師を招きワークショップを実施。全員が共有したビジョンを再確認する機会も設けた。「このような細かい運営が、チーム全体のまとまりにつながる」と原氏は力説する。
そして、提携する代理店には、背景・目的も含め可能な限りの情報を提供し、チームビルディングを行い、体制基盤は整ってきたという。
抜け落ちていた興味関心ファネルのアプローチを強化
この組織体制のもと、三井住友カードではフルファネルでの統合マーケティング施策を実行し始めた。
まず、認知・想起を目的とした施策として、「Have a good Cashless.」をコピーとし、キャッシュレスがもたらす普遍的な価値を提起するテレビCMを出稿。テレビCMの受け皿となるブランドサイトも用意し、三井住友カードのビジョンを提示した。
次に、キャッシュレス理解促進を目的としたオウンドメディアを立ち上げコンテンツマーケティングを実施。現在(11月13日時点)「キャッシュレス」というワードで同メディアの記事が1位に上がってきている 。
しかし、ここまでの施策だけでは、思いのほか新規申込数は伸びなかったという。というのも、キャッシュレスに興味・関心がある層に対するアプローチが抜け落ちていたからだ。そこで三井住友カードが実行したのが、ミドルファネルの施策だ。
「動画広告や記事広告、マンガを使い、キャッシュレスを身近に思ってもらえる取り組みを行いました」
そして、新規申込を加速させるべく、テレビCMもブランド訴求からキャンペーン訴求に変更。より申込につなげることを目的とした内容に切り替えた。
3月にはアプリをフルリニューアルし、最初の画面で支払額と口座残高がわかるように変更。「プロモーションからプロダクトまで、全方向からキャッシュレス化のハードルを取り除けるよう務めた」と原氏は語る。