楽天の広告ビジネスの現在地
2018年5月、楽天は広告ソリューションを「Rakuten Marketing Platform(以下、RMP)」ブランドに統一した。それまで同社は、たとえば「楽天トラベル会員向けメール」といったように、同社の各サービスを起点として広告商品を展開してきた。それらをRMPというブランドで統一し、「認知」「興味関心」「購買」「リピート」「ファン化」というマーケティングファネルに基づいて体系化。ユーザーの消費行動におけるすべての段階に対応するフルファネルのマーケティングソリューションとして、多様な広告プロダクトを展開している。
RMPの軸となっているのが、膨大な購買データなどの消費行動分析データと楽天IDだ。「楽天市場」などにおけるデータを活用することで、より効果的なマーケティングを実現できる。楽天会員はIDを通じて「楽天エコシステム」内の多くのサービスを利用することができ、実際に国内に1億以上いる楽天会員の多くが、複数のサービスを横断的に利用しているという。
オンラインとオフラインのデータを活用し、高度なO2Oマーケティングを実現する広告プロダクトが、「RMP - Omni Commerce」だ。今回は、「RMP - Omni Commerce」を構成する「Rakuten Pasha」と「Super Point Screen」に焦点を当てる。この2つはユーザーが利用に応じて「楽天スーパーポイント」を獲得できるサービスであると同時に、ユーザーがポイントを獲得するために必要な楽天IDを通じて、より深い顧客理解を実現する広告サービスである。それぞれを詳しく見ていこう。
オンラインでの当たり前をオフラインで実現する「Rakuten Pasha」
「Rakuten Pasha」は、企業が実店舗において、自社商品の販売促進を目的としたプロモーションを行うことができる成果報酬型広告サービスだ。ユーザーはアプリまたはスマートフォンサイトから商品の「トクダネ」(クーポン)を取得し、商品購入後にレシートを撮影して画像を送付すると「楽天スーパーポイント」を獲得できる。
2019年2月のサービス開始以来、ユーザー数は右肩上がりで増加している。メインユーザーは一般家庭で日用品を購入する30代〜40代の女性だが、お得感も高いことから、最近は40代〜50代の男性、10代後半や20代のユーザーも増えているという。
今年11月には対象を映画にも広げ、鑑賞した映画の半券を撮影して送付するとポイントをプレゼントする「トクダネ」を発行した。「Rakuten Pasha」の事業責任者を務める山口氏は、「ユーザーの方からは、いろいろな形でPashaを楽しみたいという要望があります。今後も映画だけなく、さらに対象を広げて喜んでもらえるような展開を目指しています」と説明する。
そんな「Rakuten Pasha」の広告サービスとしての最大の強みは、実店舗における購買行動データを活用することができる点である。広告主はクーポンをどれくらいのユーザーが取得したかだけでなく、取得された「トクダネ」が実際にどのくらい使われたのか、さらに「どんな層の人が」「いつ」「どの店舗で」該当商品を買ったのかまでを分析することができる。つまり、オンラインでは当たり前に行われている購買起点のマーケティングを、オフラインでも展開することができるのだ。