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マーケター必読!論文のすすめ

アカデミックの視点から、「口コミ」と「広告のいま」を紐解く

ポジティブな口コミの発信が抑圧されるケース

 逆に製品やサービスに満足した顧客は、家族や親しい友だちに、あるいはSNSなどを介して、いかにすばらしいサービスだったか、どんなにいい製品かを伝えます。このことは、口コミ研究の世界でも、長年にわたる観察や研究を通じて明らかにされてきました。

 しかし製品やサービスに満足した顧客が、常にこのことを口コミするかというと、そうではないこともあるのです。たとえば「とてもすばらしい製品なので、これを誰にも教えたくない」という感情が働くことがあります。このような気持ちを「独自性欲求」と呼びます。つまり製品やサービスに満足しても、ポジティブな口コミの発信が独自性欲求によって抑制されてしまう場合があるのです。このことを示した研究(Cheema and Kaikati 2010)が近年注目されています。

 この研究に関して、慶應義塾大学小野晃典教授と立命館大学菊盛真衣准教授による論文「独自性欲求が口コミ発信行動に及ぼす影響」(PDF)では、(1)実際には独自性欲求にはいくつかのタイプがあるにもかかわらず、Cheema and Kaikati(2010)ではそのうちの1種類しか取り上げていないこと、(2)独自性欲求の中には、ポジティブな口コミの発信をむしろ促進するタイプもあること、の2点を明らかにしました。

 少し難しい用語になりますが、独自性欲求には(ア)「類似製品回避行動欲求」、(イ)「創造的製品選択型非同調行動欲求」、(ウ)「不人気製品選択型非同調行動欲求」の3種類があります。これら3つの独自性欲求は、他者からの差異化のために異なる製品を選択するという点では共通していますが、自分が選択した製品を他の消費者が真似することについてどのような対応をするか(放任するか、誘発するか、拒絶するか)、他の消費者から承認してもらいたいか、他の消費者から逸脱したいか、の3点において、それぞれに異なっているのです。そして同じ独自性欲求と言っても、上記(ア)および(ウ)の独自性欲求をもつ消費者のポジティブな口コミの発信は抑制されますが、(イ)のタイプの独自性欲求はむしろ促進すること、が明らかになりました。

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消費者とブランドの結びつきを、広告で強くできるのか

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この記事の著者

澁谷 覚(シブヤ サトル)

学習院大学国際社会科学部教授 博士(経営学)
2003年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科後期博士課程修了。東京電力、新潟大学助教授、東北大学准教授・教授を経て、2016年より現職。主な受賞に、日本マーケティング本大賞2019 大賞、2009年度吉田秀雄賞奨励賞、2012年度日本商業学会優秀論文賞、2016年度吉田秀...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/10 08:00 https://markezine.jp/article/detail/32500

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