『コカ・コーラ』の価値=“Uplift”“Unite”

和佐:たとえば『コカ・コーラ』を例に挙げると、これは130年以上前にできたブランドで、開発に関わるわけではないのでアクティベーションに近いマーケティングではあります。ただ、なにせ世界のほとんどの国と地域で流通している製品なので、ものすごいペネトレーション(浸透度合い)がある。困った課題を解決する製品ではなく、かついつでもどこでも買える製品をどう手に取ってもらうかというのは、とても特殊なアクティベーションです。ブランドに課されるミッションがすごくユニークで、大きいですね。
西口:そういう製品を買ってもらうのに、何に注力しているのですか?
和佐:なぜ皆さんが『コカ・コーラ』を飲んでくれるのかを考えるとき、僕らはそれは「Uplift People」そして「Unite People」という2つの言葉に集約されると考えています。これが、ブランドの“エッジ”です。
Upliftは、高揚する、気分を上げるという意味ですね。おいしくて、元気になれる。そしてUniteは、融合。『コカ・コーラ』があるシーンというのは、一人より皆でわいわい飲んでいるところのほうがよく想起されるんじゃないかと思います。そういうシーンで、人と人をつなげる役割を担いたいという考えがベースにあります。
西口:なるほど、だからオリンピック&パラリンピックや音楽フェスといった場をサポートしているわけですね。
和佐:そうですね。対立が続くインドとパキスタン間の国境に自販機を置く、という施策をしたこともありました。他にも『アクエリアス』なり『ジョージア』なり、それぞれブランドの立ち位置がありますが、いずれにしてもP&Gの問題解決型の製品とは違いますね。
ブランドのエッジを若年層にどう伝えるか
西口:先ほど、『コカ・コーラ』ブランドのエッジとして高揚と融合という言葉がありました。これは、青春時代から製品に接している僕らは体感していますが、今の若い人たち、現時点ではそんなにブランドに思い入れがない人にとってはどう受け止められていると思いますか? 飲料ブランドにおいても若年層の獲得は大きな命題だと思うのですが、新規向けにはまた違うコミュニケーションを図っているんでしょうか。
和佐:ご指摘の通り、若年層との関係構築は僕らが日々直面しているビジネス課題のひとつです。でも、ブランドのエッジは世代が変わろうが時代が変わろうが、ブレないもの。ブレるべきじゃないものだと思ってます。なので、考える点は伝え方ですよね。どのように、彼らがわかりやすく親しみやすい形で話すか。
特に今の時代が難しいのは、ネットやスマホの通信費がかなり若年層の負担になっていて、飲料にかける費用が減っていることです。さっきの話じゃないですが、本当に、水道水でいいじゃんと。
西口:確かに……。
和佐:その中で『コカ・コーラ』に手を伸ばしてもらうには、やはり限られたお小遣いの中で100円、200円を払う理由がないと難しいです。なので、たとえばテープを引くとリボンになる「コカ・コーラ リボンボトル」という施策や、期間限定の『コカ・コーラ ピーチ』など、ティーンが興味をもってインスタなどに上げたくなるような企画を積極的に展開しています。
こうした活動をきっかけに、普段は手に取らない人がふと手にしておいしさに気づいたり、「私のこういう生活に合うかも」と思ったりしてくれることを意図しています。