実施判断のポイントは“リードタイムとコスト”
――MMMを通じて、各広告の貢献度が正しく見えるようになるのですね。実施にあたってポイントとなることはありますか。
村岡:着手してからアウトプットデータが出るまでに、ある程度の時間がかかります。はじめに分析モデルを構築するために、すべてのデータを見ながらそれが正しいかどうかを判断した上で、実際に回して結果を出すので、通常は半年ほどかかります。しかし今回当社が活用したMMMでは、一度枠組みを作ってしまえばPDCAを回せるので、現在私たちは3、4ヵ月でアウトプットできるようになりました。
他には、調査費用も課題になるかもしれません。実施にあたっては、どのように社内理解を得るか、どのくらいのペースで取り組んでいくのかについて、各企業が考えていく必要があると思います。
私たちの場合は、Eコマースをスケールさせていくことを重視しており、正しい効果測定による意思決定をしようという意識が浸透していたために、 コンセンサスが取れました。また、MMMによる予算配分の最適化で今後得られるメリットと比較し、調査費用を十分にカバーできると判断しました。
――モデリングのためのデータ準備については、いかがでしたか。
村岡:確かにMMMを行う際には、場合によっては部署をまたいでデータを集める必要がありますが、日頃からしっかり集約できていれば、それほど時間はかからないと思います。私たちはPOSやコンバージョンデータは既にもっていたものを反映し、デジタルデータはBIに蓄積していたので、そこから引っ張ってきてくることができました。
「仮説は正しかった」結果に沿って予算配分を変更
――分析の結果と、それを踏まえて見えてきたことについて聞かせてください。
村岡:今回は各施策による「ネスカフェ アンバサダー」への申し込みに対しての貢献度、効率性、そして広告投資の余地の有無についてレポートを作成しました。
貢献度については、2017~2019年を通して、他のSNSと比べてFacebookとInstagramの数値が最も高く出ていました。ラストクリックで計測すると必ずしもそういった結果にはなりませんので、計測乖離が起きているという仮説は当たっていたことがわかりました。
また効率性(ROI)についても継続的に良い結果を残していて、たとえば2019年の1~3月期においては、他の主要プラットフォームと比較して約3~4倍高いことが明らかになりました。さらにデジタルの中で、結果的に過剰投資をしてしまっていた媒体があることも見えてきましたね。
――仮説の検証ができたのは、大きな前進ですね。
村岡:はい。今回はテスト実施の意味合いが大きかったのですが、今後も継続して実施していくことにしています。予算配分も、テレビCMやFacebook・Instagram広告にまだ投資余地があることがわかったので、今回の結果に応じて変更しました。