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米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』

「データの利活用」という言葉を無意識で使うリスク

逼迫するデータ課題

 現在ではWebサイトには企業側が発する「トラッキングの同意取得」のポップアップ画面が溢れている。企業側が自己防衛とばかりに押し付けている「当たり前」に、生活者(消費者)側が従ってしまっている状態に「気づけていない」状態だ。

 たとえば消費税引き上げのタイミングでは「キャッシュレスの決済履歴をもとに、小売店などが顧客の購買動向をすぐに把握できるデータサービス」などの発表も見受ける。個人および加盟店名が特定されない統計データとして扱われるものの、ユーザー個人とその「利用目的・用途」に関して明確な契約を「あらためて」取れている「新サービス」とは考えにくい。データ販売側とデータ利用店舗側の企業たちが「データ利活用」する文脈だ。

 ユーザーが申込時にいくらオプトイン(規約に同意する)の印を付けていたとしても、「まさかそんな風に使われているとは」という声が出ない同意のとり方だっただろうか。長い規約文の下に「同意する」のボタンを押させる行為は「みなし同意(だましの同意)」に並び倫理的におかしいと判断するのは、法規制ではなく自己の理念だ。「内定辞退率データ」の一件が騒ぎに発展したのも、手順の不手際ではなく、企業行動の理念・倫理の部分だ。

個人データに対する向き合い方を刷新する

 過去の商習慣や法規で「セーフかアウトか」という境目で区切るのではなく、「あるべき姿」を常に考えたい。今後続々と追いついて発令される規制の罰則を回避するために(リアクティブに)対応するのではなく、個人データを扱う事業担当者・マーケターとして、先導する姿勢やプロアクティブに向き合うことで、最終的に新しい価値創造や企業価値向上という結果に直結する。個人の意識の変化の結果、その集団(企業・社会)のあり方や行動の指針が変化する。自己の資産拡大は顧客とともに育てるのは当然であり、先手で考えを刷新する方向に世界は動き出している。

 これらの概念は個人データ保護の課題にとどまらない。世界を見渡せば国連主導で「SDGs※2」「ESG※3」等の「持続可能な」環境・社会課題への関心と共通する動きだ。「二酸化炭素を抑制して地球環境を守ろう」「時短・差別のない・働き方を改革しよう」「持続可能な消費と生産のパターンを確保しよう」などの「社会的課題」と並列で、「個人のデータに対する企業の付き合い方を刷新しよう」とするものだ。個人のデータという社会資産への取り組みも、緊急で経済インパクトが大きい事象だ。ここに気づけば動きが加速するかもしれない。

※2 SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称

※3 ESG:世界の解決すべき課題を環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の観点から行うこと

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/25 15:15 https://markezine.jp/article/detail/32652

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