データの向こう側には人の心がある
もう少し“データの向こう側”についてお話ししましょう。

これは、ある都市の月ごとの気温チャートです。ここから何を読み取るかは、チャートを見る人のとらえ方で違ってきます。
ある人はこのチャートを見て、「この都市の年間平均気温は、23.8℃だ」と算出しました。
他のある人は、「この都市は寒くなる時期がある。何を着ていこうかしら?」とその都市に訪れたときのすごし方を想像しました。この2つのとらえ方は、収束と拡散、あるいは解析とストーリーと言い換えることができるかもしれません。
データの向こう側を探索するとき、後者の視点が役立ちます。データが示す事実において、その先にどのようなシチュエーションや、人の心の動きが想像されるのか? この様なエビデンスと洞察の組み合わせによる仮説設定を”データの向こう側”と呼んでいます。
セグメントを何で切るか
JTBの1to1コミュニケーション戦略で最も重視しているのは、セグメントを何で切るかということです。データを解釈し、お客様のストーリーを捉え、その特徴別のアクションをするとき、我々は、顧客の購買文脈(コンテクスト)を切り口にします。
ハワイの旅行を例にコンテクストについて考えてみましょう。下図はオアフ島(ハワイ)の地図です。1週間の大半をワイキキとアラモアナショッピングセンター周辺で過ごしたファミリーAと、ノースショアまで足を伸ばしたファミリーBがいます。このとき、後者のほうが“ハワイ玄人度” が高そうです。

前者は宿泊先にオーシャンビューを求める傾向が見られますが、玄人度が高く、土地勘のある後者にはそれほど見られません。このような両者に対し、同じトップページを見せることやレコメンデーションをするべきではありません。なぜなら、ハワイに行く目的、ニーズが異なるため、訴求すべきコンテンツが違うからです。
ハワイの“玄人度”のような、旅行者自身の文脈をセグメントの切り口に応用することで、コミュニケーションのあるべき方針の違い、を生み出すことができるのです。
そして重要なのは、50代のハワイ初心者もいれば、20代の玄人もいる、ということです。つまり、年齢、性別、購買金額といった単純属性情報による分類は、コミュニケーションの切り口として意味を喪失します。