ニールセン・カンパニー(以下、ニールセン)はVenture Café Tokyoのイベント「Marketing for 2020 Night」において、脳科学を用いたマーケティングと広告クリエイティブの改善をテーマにセッションを実施した。本記事ではニールセンシンガポールの辻本悟史氏による解説、Facebook Japanの中村淳一氏との対談についてレポートする。
消費者は「感情が先、理由は後から考える」
はじめにニールセンシンガポールの辻本悟史氏が、「ここまできた脳波計測によるマーケティング課題の解決」と題したセッションを行った。
神戸大学准教授、京都大学准教授を経て2007年よりニールセンに参画。
日本を含むアジア太平洋地域を中心に、コンシューマー・ニューロサイエンスの事業展開に幅広く貢献。
最初に提示された問いは、なぜニューロサイエンスをマーケットリサーチに活用すべきなのか。辻本氏はその理由を「人の意思決定は無意識に左右されている」と説明し、ある実験を紹介した。
英国のある大学の研究室で、無人のドリンク販売所を設置した。飲み物を飲んだ人には、その価格分のお金を設置してあるボックスに入れてもらう仕組みだ。数週間にわたって実験を続けたところ、週によって支払われた額に差が生じていた。
ポスターと支払額には、関連が見られる
実はこの実験では、販売の仕組みを説明するためのポスターを、1週間ごとに変更していた。支払額とポスターを照らし合わせると、人の顔が描かれた時のほうが、正直に支払う学生が多かったことがわかる。しかし被験者の学生に、お金を払った/払わなかった理由を聞いたところ、ポスターのクリエイティブに関する話ではなく、別の理由を挙げていた。(Bateson M et al. Biology Letters 2: 412 -414 (2006)より)
従来、人は様々なことを吟味した上で意思決定を行うと考えられていたため、消費者を説得して、購買に結びつけることがマーケティングの目標とされていた。しかしこのような実験などから明らかになった意思決定のフローは、「知らぬ間に何かを感じ、それに基づいて意思決定をして、理由は後から考える」。しかも、顧客が話してくれた理由は、本当の理由ではない可能性もある。だからこそ、無意識にアプローチできるニューロサイエンスが役に立つ。

マーケティングは説得から“感情関与”へ
マーケティングコミュニケーションにおける新しい考え方は「説得しようとするのではなく、顧客の感情に関与すること」と、辻本氏。ニールセンではニューロサイエンスのツールを用いてクリエイティブやコンセプトの評価を行う際の主要指標として、注目、感情関与、記憶の3つを用意し、総合効果を測っているそうだ。
「私たちの脳の処理資源は限られているため、まずは注目してもらうことが重要です。しかし注目してもらったとしても、好ましい感情をもっているとは限りません。対象と近づきたいか、それとも遠ざかりたいかという感情の反応は、意思決定にとても大きな影響を与えるため、感情関与も測っています。さらに自分にとって重要な情報として記憶に残っているかどうかについては、長期記憶の賦活度合いをみています」(辻本氏)
3つの指標を用いた調査は、ブランドからインストアまでマーケティングのバリューチェーンの全域で応用できる。

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蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)
東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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