生活者の意識を捉え、新たなサステナブル市場を開拓する
博報堂では昨年、全国の生活者の購買行動と意識を聴取した「生活者のサステナブル購買行動調査」を行いました。調査結果からは、「必要最小限を買い(ミニマル)」、修理しながら「長く使い(ロングライフ)」、不要になったものは「人にあげる・売る(サーキュラ―)」という、日本の生活者のサステナブルな購買行動の特徴が見えてきました。
さらに同調査をもとに、食品や日用品の購買行動で生活者を8つにタイプ分けした「サステナブルな買い物クラスター」を導き出し、クラスターごとの詳細な価値観や購買意識を明らかにしました(図表4)。そこから見えてきたのは、サステナブルな買い物市場の拡大可能性です。

8つのクラスターのうち、社会貢献を意識した購買を既に実践している層(図表4内クラスター【1】)は国内市場の約1割のボリュームでした。こういった「環境に良いから」「社会に良いから」という理由で買い物をする層だけをターゲットにする限り、どうしても市場は狭くなります。
しかし、安心・安全を重視する人(同クラスター【2】)には情報を適切に伝えることでサステナブルな買い物につながるかもしれませんし、長く使える物を賢く選ぶこともサステナブル購買と捉えられます(同クラスター【3】)。新しいものや流行を好む人(同クラスター【4】)には新技術やデザインが購買のきっかけになったり、価格を重視する人(同クラスター【5】)には結果的なコストパフォーマンスの良さを伝えることでサステナブル商品が選択されるかもしれません。このように考えていくと市場の6割近くが対象となり、サステナブル市場は大きく広がります。
サステナブルだからこそ生まれる価値を見つけて、それを適切な層に適切に伝えていくことで、企業は新たな市場を開拓し、ビジネスを拡大していけるのではないでしょうか。生活者が物を所有しなくてもよいサブスクリプション型サービスやシェアリングサービスの普及も、その追い風となるでしょう。
SDGsをきっかけに、次の時代の豊かさへ
生活者と企業が一丸となってSDGsの達成を目指していく今の流れは、次の時代の豊かさを考え直す良い機会です。このタイミングで生まれるサステナブルな購買行動のスタイルや生活者、企業の意識は、SDGsの期限である2030年以降も続くと考えられます。企業間の関係性も、利益で競う「競争」ではなく、社会を共に創っていく「共創」へと変わっていくはずです。企業はまずは自社でできることから取り組み、その実績や強みを発信することによって、新たなコラボレーションパートナーとつながっていくことができるでしょう。