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OMO時代の体験設計はシームレスから「フリクションレス」へ/オイシックス奥谷×グーフ岡本対談【前編】

ベテラン販売員が設計に携わり、「丁寧さ」を生み出す

岡本:私はあるセレクトショップの紙媒体の使い方に惚れ込んでいます。カタログは、もはやカタログの域を超えて、モード系の雑誌かと勘違いするくらいよく作りこまれているんですよね。クーポンのクリエイティブもこだわり抜かれたもので、店頭で1万円購入するごとに1,000円のクーポン券を渡しているのですが、もう使わずに飾っておきたいくらい素敵なんです。もちろん店頭でもデジタルでも使える仕様になっていて、デジタルへの誘導の仕方も、とてもスムーズです。

 聞いたところによると、このカタログを制作しているのは、長年店頭で販売員を経験された方。だからこそ、どのような顧客体験を提供すると、ユーザーの心に響くのか知り尽くしているこれが、フリクションレスな顧客体験を作る丁寧さ、きめ細やかさなんだなと思いました

奥谷:D2Cコスメブランド「Glossier(グロッシア)」のニューヨークの本店も、素晴らしかったですよ。店舗はショールームとして使われていて、そこで各々が、自分に合うアイテムを試すことができます。私は「娘へのお土産に、なにか買いたいのですが……」と聞いたのですが、ピンクのオーバーオールを身にまとった店員がおすすめのものを見繕ってくれて、その場でクレジットカードで決済。お会計は、それでおしまいです。

 あとはワクワクしながらレジへ向かうと、いつの間にか自分の名前が書かれたピンクのショッピングバッグに、商品が入って用意されている。その中には、お店のロゴステッカーまで入っていて、皆テンションが上がった状態でお店を出る。このショッピングバッグもとにかく「映える」から、帰り道も嬉しい。デジタルでの世界観を壊さないショップ作りも、素敵なフリクションレスの一例です。

シームレスは企業都合、フリクションレスは生活者起点

――シームレスという言葉もよく使われますが、どう違うのでしょう。

奥谷:シームレスはあくまでも「企業が提供しているサービスの状態」をさします。とりあえず紙の印刷物にQRコードをつけました、IoTデバイスはアプリと連動しています、という状態。なるほど確かにオンとオフがつながっているから、シームレスな状態ができあがっていると言えます。

 ところがいざ使ってみると、QRコードが読み取りにくい、連動しているアプリはUXが最悪などの不具合が多く、消費者は心地いい体験ができないこれは「フリクションだらけ」な状態ですよね。以前と比べてテクノロジーが普及して、どんなサービスを提供するにせよ、“とりあえず”オンとオフをつなげることはできるようになった。しかしいざ使ってみたら、スムーズには使えず摩擦だらけ。そんな状態が、そこかしこで起こっているわけです。

 OMO時代の主役は消費者です。使う側の消費者の目線に立って、あるサービスを使う時に、リアルタイムで欲しい情報にアクセスできるか、ユーザーが常にインタラクトしたくなるか、アプリにせよサービスにせよイライラせずにスムーズに使えるか。そんな快適なユーザー体験がデザインされている状態、それが「フリクションレス」だと理解しています。

岡本:シームレスはどこまでいっても企業都合なんですよね。印刷業界でもテクノロジーの活用が当たり前になり、「バリアブル印刷で、レコメンドをそのままオートメーションで印刷に載せました」といった技術を競うようなサービスが増えてきました。

 しかし大事なのは、生活者を中心において、ブランドとの強い信頼関係があって、サービス体験を楽しめる状態があって、ということ。テクノロジーがあるからただそれを使いました、というやり方では企業都合のシームレスにしかならなくて、生活者を起点とした豊かなサービス体験は生まれないと感じています。

奥谷:そうですね。プロダクトアウトや、製品・サービスの押しつけ、一つのブランドだけで消費者を染め上げてしまおうというようなことは、どれも「フリクション」になってしまうと思います。

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「スマートショッパー願望」を満たすことが一つのゴール

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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2020/03/13 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32944

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