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マーケティング全体最適を阻むのは経営との「分断」【M-Force西口氏×サイカ平尾氏対談】

MMM+心理分析=経営とマーケティングを統合する理想モデル

西口:それはいい傾向ですよね。先ほどの“分断”が解消に向かっている。

平尾:合わせて、以前はオンラインにコンバージョンポイントがあって「オフラインの施策の効果を知りたい」というクライアントが大半でしたが、去年くらいから逆転している印象です。オフライン、つまり店舗にコンバージョンポイントがあって、POSの売上に対して「オンライン施策がどう効いているか知りたい」と。

 成果に対するROIがわからない、という課題を解決するのがMMMなので、その点では数学的なアプローチによる予算の最適化によって“マーケティングを科学する”ことができつつあるのかなと感じています。

西口:そうですね。ひとつMMMとぜひ併用してほしいのは、心理分析ですね。私が昨年共同創業したMarketing Force(以下、M-Force)では、顧客戦略を策定するための顧客セグメント分析と、セグメント毎の差異分析を基に、顧客の深い心理分析を担っています。

 たとえばABテストにしても、Aが勝ったら今度はAとA’で競わせて、と効率化していく企業が多いですよね。Bには見向きもしなくなる。でも、「そもそもなぜBが負けたのか?」という顧客の心理的な理由を掘り下げることで、行動の背景にある心理をつかめます。顧客の心理を起点に、MMMで行動の把握と投資の最適化を図れば、おそらく経営とマーケティングを統合した理想的なモデルができあがると思います。

平尾:そのご意見には強く共感します。僕らも心理指標を分析に取り込むために、外部パートナー企業との協業を今どんどん進めています。

1円に対するリターンに執念があるか

平尾:冒頭で、西口さんには“特に日本企業では”としてMMMが広がらない課題をお話しいただきましたし、僕も前述のように日本企業とグローバル企業の違いを感じています。この違いは、どのような背景から生まれているとお考えですか?

西口:かなりマクロ的な話になりますが、米国系企業が相当早くからMMMに取り組んでいて日本が遅れているのは、圧倒的に株式市場の期待値が違うからだと考えています。

 米国の大手上場企業は、ROIに対する株主の期待が非常に厳しいですね。CDOやCMOも基本は2年契約で、早ければ1年か半年でジャッジされる、つまりクビです。

 片や日本はほぼ0%金利のため、株主の期待値がそもそも低いことにあぐらをかいて、“日本的経営”“長期的経営”という言葉でごまかしてきたと思います。90年代は、私もそんなものなのかなと、自分は米国系のシビアな環境でつらいと思っていましたが、30年経った今現在で米国系企業よりもパフォーマンスを出している日本企業があるかというと、残念ながら完全に置いていかれています。

平尾:確かに……極めて厳しい状況ですね。

西口:やはり、緊張感が違う。1円使うことに対するリターンをどう考えるか、そこへの株主のプレッシャーが違うという歴史的背景があるし、だから現在もデジタルを中心に、米国系企業の経営者やCクラスの方はものすごく勉強しています。

西口:もうひとつは、企業のステージによって組織戦略も変えるべきなのに、そこができてこなかった。70~80年代、日本では当時の優秀な経営者や創業者がすばらしい商品をたくさん生み出しましたが、それ以降ずっとその事業の水平拡大のために人員を配置し、組織を広げてきています。商品が強いので大幅には落ち込まずとも、それだと新しい価値を生み出すエネルギーがどこにも宿らない組織構造になるんです。さらに、結果として水平展開を行う上での自分の担当分野には習熟していますが、事業全体を考えたり、新しい価値創造をするような人材育成がスポッと抜け落ちてしまいました。このジリ貧の状況に気づいて、人員と組織構造の観点から投資を見直すことも必要だと思います。

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企業はグロースのステージに合わせて戦い方を変えるべき

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/03/23 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32980

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