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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

顧客視点で組織文化を変革 レノボがCX投資に懸ける意図と勝算

CX重視とビジネス成果を顧客調査で確認

――CXを最優先し、顧客満足度を高めるために、法人向けPCも国内生産に踏み切った?

ベネット:はい。直近の課題として解決したかったのは、納期の短縮です。既に開発とサポートは国内で手がけており、製品自体の評価も顧客やパートナーである販売代理店からは高かったのですが、納期だけは他社より遅いという不満が顕在化していました。これを、すぐにでも改善したかった。

 加えて、大和研究所や米沢事業場、また修理サポートを手がける群馬事業場という国内のグループ施設をもっと有効に活用したい考えも以前からありましたので、ご指摘のように相応の投資にはなりましたが、決断したのです。これにより、外資のPCメーカーとしては、R&Dから生産、サポートまでをすべて国内で手がける唯一の企業になりました。

――先ほど、顧客満足度が高い企業は利益も増大するというお話がありました。顧客満足度はCXにおいて重要な要素だと思いますが、CXの向上が実際に御社のビジネス成果につながっているかどうかは、調査などで確認されているのですか?

土田:そうですね。CXにフォーカスし始めてから、定期的に顧客調査を実施してフィードバックを得ています。見積もりや納期の回答のスピード、価格や性能への満足度、コールセンターの対応の印象など、細かくうかがった上で、総合して他者に推薦したいかをNPSとして把握しています。

ベネット:私は世界中のPCメーカーや工場を見てきましたが、日本のユーザーのクオリティに対するこだわり、要求される水準はとても高いですね。これまでは、納期以外はその水準に応えられるようコントロールしてきたので、納期の短縮はさらにCXを引き上げる要因になるだろうと思っていましたし、実際その手応えを徐々に得ているところです。

CXの指標を人事評価にも組み込む

――CXは、重要事項として掲げる企業は多くなっていますが、掛け声に終わりがちで、なかなか企業の姿勢やカルチャーに根付かせることは難しいかと思います。その点にどう取り組まれていますか?

土田:おっしゃるとおり、宣言だけなら簡単ですよね。当社では実際にビジネスマネジメントの指標に組み込み、出荷台数や利益と並列で常にチェックする他、定期的にこの重要性を皆が認識して活性化するよう、社内イベント「CXday」を設けています。米本社にはCCXO(Chief Customer Experience Officer)がいるのですが、先日は来日のタイミングで大きなホールを借りてデビットと対談を実施したりしました。加えて、高い推進力になっているのは、全社員の評価にCXを組み込んでいることだと思います。

――全社員にですか。それはつまり、給与査定に影響するということですか?

ベネット:はい。ノンセールスの部門は一定の割合で総合的なCXを、セールス部門はコンシューマーならそのCX、法人なら法人のCXを適用しています。

――人事評価にCXを組み込むほど本腰を入れているのですね。

ベネット:このようなHRプログラムの変更も、投資のひとつですね。米沢での法人向けPC生産をはじめとする一連の変革が、個人向けで国内生産に踏み切った2015年から4年も経ってしまったのは、やはり投資額が大きな課題になっていたからです。私が参画し、本当にCXを最優先にするならば投資は必要不可欠だとグローバルとも何度も話して、最終的には「ジャパンがそこまで言うならジャパンで負担せよ」と決着しました。これによるCXの向上は、必ずビジネス成果にもつながるものと自信を持っています。

日本オリジナルの認知獲得キャンペーン

――では、法人向けPC国内生産を機に展開されたキャンペーンについてうかがいます。先ほど投資負担の話もありましたが、このキャンペーンも日本オリジナルとなったのですね。外資系企業だと本社の制約が強く、オリジナルの施策は難しいとよく聞きます。

土田:そのとおりで、これまでレノボも本社のアセットを翻訳などして適用することが大半でした。私はデビットよりも少し前の2017年9月の参画なのですが、そのずっと前から大和研究所や群馬のサポートセンターは日本ならではの強みとして情報発信をしていたものの、なかなかうまく伝わっていなかった背景があります。ただ、今回せっかく国内生産という大きな決断をし、R&Dからサポートまでの体制を万全にしたので、エンドユーザーの皆様にぜひ知っていただきたいと、認知獲得を主目的とするキャンペーンを検討しました。そのためには日本独自のメッセージとクリエイティブ、そして一定規模のマーケティングチャネルを使うことが必要だとまず考えました。

――企画段階で、どういった点がハードルになりましたか?

土田:オリジナルの展開であっても、レノボが発信するものとしてアジアパシフィック、そしてグローバルの承認を得なければいけません。そこで今回は、事前の定量的な分析に相当のコストをかけて進めました。これまでのマーケティングにおいても、皆がなんとなく「国内生産が必要だ、有効だ」とは肌で感じていたのです。ただ、営業担当が現場で聞いた声などの定性情報だったので、初めて「日本でのR&D、生産、サポートの一貫は本当にユーザーに求められているのか?」の大規模な定量調査をしました。その結果、私たちの肌感覚が正しかったことがわかったので、改めてマーケティングの部門と、戦略を担う部門と協力してプランを練り、グローバルまでエスカレーションしていきました。

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国内R&D、生産、サポートを約束する証

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

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MarkeZine(マーケジン)
2020/11/18 17:23 https://markezine.jp/article/detail/33035

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