100年以上続いた売り方が激変
「マーケターが推進する、リテール企業のDX」と題された本セッション。CaTラボ オムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏とランチェスター代表取締役の田代健太郎氏が、リテール企業を取り巻く課題とその解決策について語った。
逸見氏のキャリアは、バラエティに富んでいる。大学卒業後に入社したのは三省堂書店。以降、ソフトバンク イーエスブックス(現、セブンネットショッピング)を立ち上げ、Amazon ジャパンでBooksMDを担当。その後もイオンのデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ 執行役員EC事業部長、ローソンマーケティング本部長補佐、千趣会執行役員マーケティング担当などを歴任し、経営と現場、ITと営業、デジタルとアナログの両方に携わってきた。
こうした経験を踏まえ逸見氏は、リテール企業を取り巻く市場環境について「デジタル化やスマートフォンの普及で、100年以上続いてきた“売り方”が激変している」と指摘。既存の宣伝手法や販売方法では市場で生き残るのは難しく、変わらなければいけないこと強調した。
「スマートフォンの普及にともない、消費者が能動的に情報を得ることができるようになりました。一方、売る側も消費者のパーミッション(許諾)を得て、顧客の消費行動や嗜好性を理解するデータを取得することが可能です。企業は『個』がどのような消費者なのかを把握し、『個』に合ったアプローチができる時代になっているのです。しかし残念ながら、それを実現できている企業は多くありません」(逸見氏)
通信環境の変化だけではない。顧客の消費行動の変化を示す数字もある。リテールの市場規模は1997年の148兆円から2016年の128兆円に減少している一方、訪日観光客が年間4兆円(2018年度実績)を消費するようになった。このことからも、“マス”に向けて広告を打つという従来のやり方を脱し、DXに向けた体制構築を急ぐ必要があることがわかる。