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Eコマース時代にリアル店舗が生き残る術

リアル店舗が強みを持つ分野の特定

 米国のデータサイエンス・市場調査会社Escalentがこのほど発表した「店舗小売に未来はあるのか:『リアル店舗の終焉』、誇張の可能性」というレポートで、Eコマースとリアル店舗における消費意識に関して興味深い傾向が示された。

 それはEコマースで伸びているのは一部の分野であり、多くの商品に関しては依然リアル店舗で買い物をしたいと考える消費者が多いということだ。同レポートは、リアル店舗と親和性の高い分野にフォーカスし、ショッピング体験を向上させることでEコマース時代でも十分に生き残ることができると指摘している。

 どのような分野がEコマースとの親和性が高いのか。Escalentが同レポートで明らかにしたEコマースで伸びる分野のひとつが「音楽・映画・書籍」だ。デジタル化が進んでいる分野であり、オンラインショッピングとの相性が良く、Eコマースでは今後13%の伸びが期待できるとしている。次いでEコマースとの相性が良いのが「電子機器・コンピュータ」と「玩具」で、それぞれ7%の伸びが期待できるという。

 この数字は、調査対象となった回答者に各分野において、オンライン購入を増やすのか、またはリアル店舗購入を増やすのかを聞き、その割合の差し引きを示したもの。たとえば「音楽・映画・書籍」分野では、オンライン購入を増やすと回答した割合が24%だったのに対し、リアル店舗での購入を増やすとの回答が11%だった。差し引き、オンライン購入が13%増えるという計算だ。

 他にオンラインショッピングで伸びる分野として「アパレル・靴」「ジュエリー・アクセサリー」が挙げられているが、その予想伸び率はそれぞれ4%と3%と限定的なものになっている。

 同レポートが分析対象としているのは全13分野。そのうち大きく伸びることが予想されるのは「音楽・映画・書籍」「電子機器・コンピュータ」「玩具」の3分野。「アパレル・靴」と「ジュエリー・アクセサリー」の2分野の成長は限定的。そして他の8分野においては、変化なしまたはリアル店舗での購入が増える可能性が示唆されているのだ。

 今後リアル店舗での購入が最も増える可能性があるのが「食料雑貨」で、16%の増加が見込まれる。次いで「家庭用品」が8%、「日曜大工品」が5%、「家電」が4%、「ペットフード・用品」が1%、「美容品」が1%。「スポーツ用品」と「ベビー用品」はオンライン購入とリアル店舗購入の割合がほぼ同じとなり変化なしと予想されている。

 過去3ヵ月の分野別購入履歴を見ても、リアル店舗での購入が大半を占めており、その存在意義が依然大きいことがうかがえる。「食料雑貨」では、回答者の81%がリアル店舗で購入したと回答。オンライン購入は4%にとどまった。「家庭用品」ではリアル店舗が76%、オンラインが4%。「美容品」はリアル店舗57%、オンライン8%。オンライン購入の増加が見込まれる「アパレル・靴」は、リアル店舗が40%、オンラインが13%だった。

Eコマースの弱みとリアル店舗の強み

 分野別で見ると、Eコマースに対しまだ優位性があるリアル店舗だが、油断は禁物だ。ショッピング体験を常に刷新し、最適化することが求められる。

 それを実行する上で、人々がなぜオンライン購入ではなく、わざわざリアル店舗に足を運び購入しているのかという理由を知ることが重要となるだろう。

 Escalentの調査は、人々がリアル店舗で購入する理由についてもその詳細を分析している。たとえば、「食料雑貨」では55%が実際に手にとって商品を確認したいからと回答。食料品の鮮度などを自分の目で確認したいという人々が多いことが示されている。また、送料を払いたくない(42%)、配達を待ちたくない(41%)、店舗の棚を眺めるのが楽しい(40%)、欲しいものを探しやすい(37%)、商品の比較が簡単(34%)、価格の比較が簡単(32%)などの回答割合が高かった。

 こうした数字を参考にすると、リアル店舗では、ARを活用し商品・価格比較を一層簡単にしたり、アプリによる店舗案内や商品検索機能を追加したりするなどの施策導入が考えられるのかもしれない。

 またEscalentの調査では触れられていないが、「過剰包装」というEコマースが抱える環境課題に目を向ければ、リアル店舗の取るべき一手が見えてくる。

 Eコマースの伸び率が最大のアジア太平洋地域。その中でも所得水準が高く、域内市場へのゲートウェイとして様々な商品・サービスがいち早く登場するシンガポール。その現地紙ストレーツ・タイムズが2019年4月に公開した「Eコマースの醜い秘密」という記事が話題となった。

 同記事では、東南アジア地域のEコマース市場が急速に伸びていることに触れつつ、過剰包装がごみ問題を一層深刻にする可能性を指摘。同記事によると、オンラインで購入した商品を梱包するダンボールの箱、その中の実に80〜90%のスペースが使われていないというのだ。過剰包装は人々の関心ごととなり、Twitterなどでは、ダンボール箱の無駄使いぶりを写真付きで投稿する消費者が増えている。

 この問題はForbesなどでも大々的に報じられており、英語圏ではかなり広く知れ渡った問題となっている。

 ニューヨーク・ブルックリンに登場した梱包なしのリアル店舗「Package Free」が環境意識の高い買い物客の間で人気が高まっていると言われている。リアル店舗のあり方を示す好例として、消費者だけでなく、マーケターからの注目も高まっていくのではないだろうか。

梱包なしリアル店舗「Package Free」のWebサイトhttps://packagefreeshop.com/
梱包なしリアル店舗「Package Free」のWebサイト

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この記事の著者

細谷 元(Livit)(ホソヤ ゲン)

生成AI関連のトピックを中心に執筆。最近の注目トピック/キーワード:エージェンティックAI、LangGraph、Deep Research、Anthropic、オープンソースモデル

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/11/18 17:26 https://markezine.jp/article/detail/33053

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