井上さんがキャリアを築く上で大事にしていたことは?
MZ:井上さんは複数回転職を経験されていますが、その中で共通している軸や条件はありますか?
井上:軸としては、マーケティング×デジタルで一貫しています。その中で判断するポイントとなっているのは、会社が必要としていること、自身が提供できること、市場が必要としていることの3つの視点でした。これを3つの円に見立てていました。

そして、自身が提供できることと会社が必要としていることの重なりで短期的な成果を出し、会社が必要としていることで中期のための学びと実践をする。また、会社と市場がともに必要としていることを通じて将来のための成長を狙っていました。
MZ:現在は、MCAのメンターとしても活動されていますが、メンティーの方に対してはどのようなアドバイスをしていますか。
相談を受けていると、現職に対し不満を持っているケースが多いのですが、はたから見ると実は恵まれた状況だったりもします。ですので、別に今やめなくてもアンテナを立てながらもう少し頑張ってみてもいいのではとアドバイスすることもあります。
また、すべてのメンティーの方に共通してお伝えしているのは、自分自身の強みと価値観を棚卸ししていくことですね。自分自身も先ほどの3つの視点でどのようなキャリアを歩んできたのか、強みと価値観の視点からまとめています。
若いときなどは役職や給料などをゴールに置きがちですが、何をしたいのかというビジョンと価値観を明確にして、そのために必要な経験や強みを逆算してキャリアの判断軸を作るのが良いと思っています。
自身のキャリアの経営者になれ
MZ:では、最後にMarkeZine読者の中にもキャリアに悩んでいる方がいると思うので、そういった方にもアドバイスをお願いできますか。
4つあって、1つ目は自身のキャリアの経営者になれ、ということです。業界や人材の市場環境をしっかりと理解し、自分自身の強みや経験をもとにしたポジショニングを把握して、面接の際はその会社をお客さまとしてWHO/WHAT/HOWを明確にして話をする。そして先ほどの3つの視点や強みを整理しながら、過去の経験の切り売りで短期的な給与アップや良いポジションを狙うだけでなく、新しい経験と成長を考えた持続可能な良いキャリアを形成していくべきだと考えています。
2つ目は、昨今は転職や副業、独立など様々な選択肢がありますが、流行には流されず自分自身の自己認識と判断軸を持ったほうがいいと思います。流されて転職ブームに乗って無理に転職しても不幸を生む結果なので、一度自身の強みと価値観を整理して立ち止まってほしいです。

3つ目は、「ポジティブシンキングであれ」ということです。転職する・しないを含めて終わったことを後悔しても仕方がありません。きっとネガティブなことを含めた上でその判断をしているはずなので、ポジティブに今いる場所・転職した先で頑張るべきだと思います。
最後に、4つ目は自分でキャリアをコントロールすることです。数年先を見ても状況は変わっています。先は読めないし、選択肢も多様になっています。だからこそ、選ばれるために自分の強みを育て、自身の判断軸を持ち続けて目指すべきキャリアに歩みを進めてみてはいかがでしょうか。