“チームが勝たなければお客様は来ない”は本当か?
2つ目の顧客ニーズについて、竹井氏は業界の定説ともいえる“チームが勝たないとお客様は来ない”を取り上げ、「半分は事実、だが半分は言い訳だった」と述べる。
データを収集するようになり、「“チームが強いから観に行こう”ではなく、“楽しそうだから行ってみよう”というのが本質的なニーズなのではないかと気がついた」と竹井氏。そこで、”楽しそうだから行ってみよう”を前提に、意図と目的を持って企画するようにした。
ホームゲームの場合、序盤には初回来場を促進する企画を、ゴールデンウィークが入る中盤には家族連れや友達連れを狙ったライトな人向けのイベントを、終盤には来期も来てもらえるようなイベントを行うようにした。
「ゴールデンウィークや長中期の休み期間は新規顧客が多い、大人と子供のチケットをセットで買っている、などのことが見えてきたので、子育て世代をターゲットにして、名称に”ファミリーランド”と入れたり、子供向けのイベントがあることを告知する内容のメールを作成したりした」という。

このようにイベントの企画やプロモーションにおいてきちんと目的や意図を持ち、どんな効果があったのかを検証して改善するというPDCAサイクルを回すことで、効果が上がり始めた。ゴールデンウィークに毎年開催する家族向けイベント「働く車大集合!」は、家族向け、新規向けをしっかり意識した企画とプロモーションにより前売りで完売になった。「予想を上回る成果になった」と竹井氏。
データで気づいた「思い込みと現実のギャップ」
来場者全員に限定のオリジナルユニフォームを配る「GAMBA EXPO」では、新しい学びもあった。「ユニフォームがもらえるならお得と思って割とライトなお客様が来場すると思い込み、新規顧客を取り込むイベントと位置付けていた。だが、蓋を開けてみるとミドル、コアのファンが多かった」と竹井氏。「データを見て我々の思い込みが正された例」という。
データからの学びを生かして2019年のGAMBA EXPOではミドル、コアに向けたプロモーションを行ったところ見事に完売。「3年連続の完売、しかも2019年は最速で完売した」と竹井氏。
このように、データは思い込みと現実のギャップに気がつかせてくれるというメリットももたらしたようだ。「正しい方向での努力ができることにより、完売の試合が増えた」と竹井氏。「それまでは、どのデータを見ると集客アップにつながるのかを試行錯誤していた。だが次第に、この指標を持っていけば集客につながるのではないかということが見えてきた。今後はPDCAサイクルを回すことで取り組みの精度を上げたい」と続ける。

平均来場者数が史上最多に達した後も、ガンバ大阪は今回構築したデジタルマーケティングのシステムをさらに活用していく計画だ。リピート促進につながるような施策としてアプリを使ったスタンプカードを考えているほか、「試合ごとにターゲットを決めてWebや交通広告などの接点をきちんと持ち、成果を上げることにつなげていきたい」と竹井氏は語った。