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MarkeZine Day 2020 Spring

「面」への回帰、倫理的なパーソナルデータ活用が鍵に/ポストCookie時代のマーケティングを考える

 近年、個人情報保護の観点からCookie利用の規制が進んでいる。こうしたなか、Web広告やデジタルマーケティングを進めるに当たり、企業はどのようにデータに向き合うべきなのか。そんなポストCookie時代のマーケターの疑問に対し、「MarkeZine Day 2020 Spring」に登壇したMyData Japan 常務理事 伊藤直之氏が答えた。

ポストCookie時代の到来

 「新しい財布を買おう」と思い、インターネットで商品を検索する。するとその直後から、様々なブランドの財布のWeb広告が流れるようになる——こうした広告展開が、ポストCookie時代の到来により、難しくなりそうだ。

 ポストCookie時代とは、ここ数年世界的に広まっているCookie規制を受けて広まった言葉だ。Cookieとは、PCやスマートフォンのWebブラウザに一時保存されるデータの総称で、Webサイトにアクセスした際のセッション情報等が記録されている。これがあるからこそ、たとえば買い物かごに商品を入れたままページを離脱しても、再訪問時にはその状態が保持されているし、会員制Webサイトを閲覧する時、何度もログインID/パスワードを打ち込む手間が省けるわけだ。このような目的に使われるCookieは、訪れたサイト運営者が発行するため、1stパーティCookieと呼ばれている。

 他方、サイト運営者ではない外部の第三者が発行するCookieを3rdパーティCookieと呼び、複数のWebサイトを横断したトラッキングを可能にすることで、主にWeb広告配信に使われている。この3rdパーティCookieを使えば、SNSの履歴やECサイトの閲覧履歴、検索履歴などを紐づけることで個人の属性を推定し、広告精度をより高めることができる。冒頭の例のように、財布を検索・閲覧した履歴がCookieに紐付いた形で残ると、広告を配信するアドネットワークがそのCookieを利用し、購入可能性が高いと見て、訪問者をターゲティングする。広告主にとっては可能性の高いユーザーに確実に広告を届けられるという利点がある一方、まるで見張られているようで、こうしたWeb広告を「気持ち悪い」と感じるユーザーも多い

 この3rdパーティCookie規制が最近活発になってきた背景は何か。「MarkeZine Day 2020 Spring」に登壇したMyData Japan 常務理事の伊藤直之氏は、「主要Webブラウザが相次いで開始した3rdパーティCookieの制限と、GDPR(EU一般データ保護規則)などの個人情報/プライバシー保護法規制の強化の2つの要因があります」と説明する。

一般社団法人MyDataJapan 常務理事 伊藤直之氏
一般社団法人MyData Japan 常務理事 伊藤直之氏

 3rdパーティCookie規制の動きをいち早く開始したのが米Appleだ。同社のWebブラウザ・Safariは2017年に追跡規制機能「Intelligent Tracking Prevention」の実装を開始、続いてFirefoxも2019年9月から規制に乗り出した

 WebブラウザのシェアトップのGoogle Chromeも、この動きに追随。3rdパーティCookieのサポートを、2022年までに段階的に廃止すると発表し、大きな話題となった。伊藤氏は「こうしたGAFAを始めとするプラットフォーマーの動きが、ポストCookieに注目が集まる転機になったと思います」と評している。

 もう1つは、法制度によるプライバシー保護強化の高まりだ。2018年にヨーロッパで施行されたGDPRが代表的なものとなる。特定の個人を識別できないオーディエンスデータを含めた「パーソナルデータ」を、本人の同意なくビジネスに活用するのは是か非か——。Webが生活に浸透するなか、こうしたパーソナルデータに関し、技術的にも社会的にも規制が進んでいる現状がある。

ポストCookieで日本の制度はどうなる?

 翻って、日本の状況はどうか。個人情報保護法の平成27年改正法附則第12条第3項で3年ごとの見直し規定が設けられており、2020年3月10日にその改正法律案が閣議決定された。その中で特にマーケターが知っておくべき重要な事項は、「個人データの授受に関する提供記録を本人が開示請求できるようにする」こと。そして、「保有個人データの場合、従来は6ヵ月以内に消去すれば開示請求対象にはならなかったが、今回の法改正により、保存期間に関係なく開示請求の対象になる」というもの。

 もう1つ、大きな改正ポイントがある。それは「提供元では個人を特定できないが、提供先において個人を特定できるデータとなることが想定される場合、自社が持つデータを第三者提供していいか、本人の同意を得る必要がある」というものだ。

 「実はこの法改正のきっかけとなったのが、2019年に起こったリクナビの『内定辞退率』問題です。リクルート社から受け取った内定辞退率を、自社の応募データと掛け合わせることで、応募者個人を特定して内定辞退率を見るということで、応募者が想定しない意図でデータが使われていました。今回の改正法案では、これを踏まえ、提供先第三者で個人データとなる場合、提供前に個人の同意を得ることを定めています」(伊藤氏)

 この法規制により、何が変わるのか。伊藤氏は「パブリックDMPのデータを自社のCRM等の顧客データと組み合わせて活用するためには、個人の同意を得なければいけなくなります」と説明する。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/04/17 08:00 https://markezine.jp/article/detail/33146

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