※本記事は、2020年4月25日刊行の定期誌『MarkeZine』52号に掲載したものです。
マーケター必読の主要プラットフォーマー動向
マーケティングにおいて各プラットフォーマーの最新動向をチェックしておくことは呼吸をするのに等しい。2019年にはTikTokのような新興勢力が登場する中、Amazonが広告領域で台頭、ヤフーとLINEが経営統合を発表するなど様々な動きがあった。MarkeZine編集部が総力を挙げて取り組んだ『マーケティング最新動向調査2020』より、押さえておきたい各プラットフォーマーの動向を紹介する。
Amazon 広告事業が着実に成長
今やAmazonはECだけでなくクラウドサービスと広告においても強い存在感を有しているが、2019年はそのいずれもが成idea Lab.長傾向にあった。
ECにおいては2019年1月に新規顧客の獲得を測定する指標「New-to-Brandメトリックス」を導入し、広告から購入に至った顧客について1年以内の購入経験の有無を明らかにできるようになった。これにより、新規顧客の獲得コストや効率的なチャネルを分析できる。
また、アトリビューションツール「Amazon Attribution」は、メール、検索、SNS、動画などのメディアから消費者がどのように商品を発見し購入するのかを明らかにし、広告効果を検証しやすくなった。
さらに「スポンサーディスプレイ広告」の提供が始まるなど、分析に役立つツールが続々と投入されている(図表1)。
Apple 各サービスで機能拡充
Appleは2019年Q4において増収増益。9月には「iPhone 11」が発売され例年のごとく話題を呼んだが、各サービスでも様々な機能が拡充されている。
たとえば、「App Store」では2018年7月に日本でも検索広告の提供が始まった。一方、2019年はブラウザの「Safari」においてトラッキング防止ポリシーの厳格化が適用された。Cookieの有効期限が1stパーティにおいても1日になるなど、プライバシー保護の考え方が色濃く表れていると言えるだろう。
サブスクリプションサービスも次々に発表され、ゲームの「Apple Arcade」、ニュースの「Apple News+」、映像コンテンツの「Apple TV+」が提供開始となった。また、クレジットカードの「AppleCard」が8月に開始されたことも合わせ、着々とAppleのエコシステム構築が進んでいるようだ。
本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査2020』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。
ByteDance(TikTok) 日本でも巨塔へ成長
2017年8月に日本に上陸したTikTokは、2019年に特に目にすることが多くなったプラットフォームではないだろうか。機械学習によって個々のユーザーに合う動画を表示する「動画おすすめ機能」により、クリエイターが人気者になれる機会が広がり、特に若年層の間で利用が日常化している。
同社ではムービー広告プラットフォームとして「TikTok Audience Network」をローンチ。媒体社には広告マネタイズの支援を、広告主には広告ソリューションを提供する。また、リワード広告やフルスクリーンビデオ広告なども用意されている。
2019年3月にはクリエイター育成プログラムを発表。TikTokを利用するクリエイターにトレンド情報の共有、勉強会やワークショップへの招待、アカウントの成長に合わせたリソースやプロモーションの機会が提供される。プラットフォーマーがクリエイターを直接的にサポートするケースは多くなく、TikTokの成長を支える土台となる可能性を秘めている。
Facebook Instagramが成長牽引
Facebookはいまだ継続的な成長が著しく、Q3の売上のうち広告収入は前年比28%増の173億8,000万ドル、モバイル広告収入が94%を占めたという。同年9月のMAUは前年比8%増の24億5,000万人となった。
同社が運営するサービスはFacebookの他、Instagram、WhatsApp、Messengerがあり、これらファミリーアプリの同年10月のDAUは22億人、MAUは28億人に上る。
Facebook広告の特徴はCookieではなくユーザーIDがベースになっているため、ターゲティング精度が高いことだ。特に圧倒的な成長を見せるInstagramは、国内でも月間アクティブアカウントは3,300万を超える。その成長を牽引するのがストーリーズだ。他にも興味のありそうなアカウントを表示する「発見タブ」や「ショッピング機能」の充実など、同アプリ内で認知から購入、ファン化までもが完結する仕組みが作られてきている。また、ライブ動画配信サービスの「Facebook Gaming」に大物ストリーマーを引き抜くなど新たなエンタメ領域にも進出している。
この他にも暗号通貨のLibraやFacebookPayなど金融・決済サービスの構築・提供に取り組んでいる。
Google 拡大を続ける広告事業
Googleの持株会社であるAlphabetの売上において、その8割をGoogleの広告売上が占めている。Q4では全体460億750万ドル(前年比17%増)のうち広告売上が379億3,400万ドル(前年比17%増)だった。その重要性に比例し、広告事業においては数々のアップデートが行われている。
特にショッピング体験の刷新が進められており、たとえば「ショーケース広告」ではユーザーが一般的な語句で検索した際に関連する複数の商品をグループ化して表示する。GoogleショッピングのUXもアップデートが継続、探し出した商品をECサイトだけでなく実店舗やGoogle上で購入できるようになる。
2019年5月にはGmailの「プロモーション」タブなどに広告を掲載する「ファインド広告」が、また、検索画面の上部にテキストと数枚の画像をカルーセルで表示する「ギャラリー広告」も発表された。6月にはモバイルで3次元の広告フォーマット「Swirl」が展開予定であることも明かされた。
12月にはAlphabetからGoogle共同創業者であるラリー・ペイジCEOとサーゲイ・ブリン社長が退任すると発表。両氏は取締役として留まるものの、同社の次なる戦略が動き出している兆候と見て良いのではないだろうか。
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LINE 中小企業への注力を事業戦略に
ヤフーと経営統合を発表したことで大きな話題を呼んだLINE。近年は中小企業への注力を主要な事業戦略の1つに掲げており、様々な施策を行っている。
LINE@と統合したLINE公式アカウントのサービスと運用型広告プラットフォームの販売拡大を目的に、2018年に大阪と福岡に営業拠点を開設し、さらに中小企業の課題解決を担うマーケットグロース事業部を立ち上げた。「友だち追加広告」など新機能の提供も順次行われていく予定だ。
同社の広告事業は順調そのもので、2019年Q4の売上は337億円(前年比16.5%増)、特にディスプレイ広告は150億円と前年比65.4%増の急激な成長となった。広告プラットフォームとしては「LINEAdsPlatform(現「LINE広告」)」があり、タイムラインやLINE NEWSで広告を配信できる他(11月から広告主自身が申し込めるようになった)、9月にはLINEショッピング上でも広告配信が可能となった。なお、LINEショッピングの会員は7月時点で2,800万人、ユーザーの約70%が女性である。
また、8月には同プラットフォームを基盤としたアドネットワークサービス「LINE Ads Platform for Publishers」の提供が始まった。これにより、パートナーとなったパブリッシャーは自社アプリメディアにおいてLINE内での広告配信で得られるターゲティングデータを活用して広告配信が最適化される。一方、広告主はLINEのファミリーアプリや外部アプリでも広告配信が可能になった。これを機に、新たなパートナーパブリッシャーとしてAbemaTVとTikTokが参画している。
Twitter 日本は世界2位の市場
国内のSNSにおいてTwitterは非常に重要な地位を占めているが、それもそのはず、Twitter社の国別収益を見るとアメリカの次に日本が続く。Twitterは単につぶやきを共有する場を超えて、緊急時の情報が提供・共有されるなど生活インフラとしての役割も担っている。
同社の収益源である広告収入に関しては、動画広告が成長を牽引している。国内外200社以上のコンテンツパートナーと提携しており、広告主はコンテンツパートナーの動画コンテンツにプレロール型の動画広告を配信できる。その他にもプロモツイートに動画を埋め込むプロモビデオや、アプリインストールを訴求できるビデオアプリカードなど、メニューは豊富だ。
2019年にはプロダクト改善として返信を非表示にできる機能、タイムライントップにライブ配信を表示する機能、関心のあるトピックをフォローする機能がリリースされた。また、フェイクニュース対策やユーザー保護を推進するためプラットフォームの健全化に向けた取り組みも進んでいる。
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ヤフー 広告品質の向上
2019年、国内で最も大きなインパクトを残したプラットフォーマーはヤフーだろう。LINEとの経営統合、ZOZOTOWNの買収、PayPayの100億円キャンペーンなど枚挙に暇がない。一方で、広告事業に関しては堅実なアップデートが継続されており、広告の質を高める取り組みがいくつも進展している。
たとえば、2018年10月にアドフラウド撲滅に向けたガイドラインの改定とその徹底がなされ、2019年3月末までに5,900ものドメインの広告が停止された。また、広告品質を高めるためのグローバルスタンダードの指針となる「広告品質のダイヤモンド」が定義され、広告効果の可視化やブランドセーフティなどが挙げられた。
加えて、数多くのサービスもローンチしている。Yahoo!ディスプレイアドネットワークの新メニューとして「動的ディスプレイ広告」、ビッグデータから企業の課題解決を図るデータソリューションサービス、広告と販促を融合したサービスとして「Yahoo!セールスプロモーション」、さらにサービス利用度合いなど4つのカテゴリーでユーザーを評価する「Yahoo!スコア」など。広告サービスはリニューアルされ、2020年度には「Yahoo!広告」に統一される。
楽天 経済圏の拡大
広告事業が好調な楽天では、2019年2月に企業が発行したクーポンを利用して指定商品を購入したユーザーに楽天スーパーポイントを付与する成果報酬型広告サービス「Rakuten Pasha」の提供を開始した。企業はスマートフォンサイトで販促を目的としたプロモーションを行うことができ、楽天IDに基づく購買ユーザー層の高精度な属性データ分析も可能だ。同サービスでは購買者アンケートにも対応している。
5月にはライブ動画配信サービス「Rakuten LIVE」をスタート。ライブコマース機能も充実しており、ユーザーはアプリ内から販売サイトにアクセスでき、動画を見ながら商品を購入できる。楽天市場や楽天ブックス、楽天チケットとも連携している。
9月にはファッション事業者を支援する「Rakuten Fashion」、12月には飲食店や小売店などを対象にしたモバイルで注文と支払いが可能な「Rakuten Ready」の提供も始まった。これらのサービスはいずれも楽天経済圏を構築する一部であるが、その構想はもはやほとんど実現されていると言っていいのではないだろうか。
※本記事は、調査レポート『マーケティング最新動向調査2020』の内容をもとに再構成し、情報を一部アップデートしています。
本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査2020』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。