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MarkeZine Day 2025 Retail

ファンを軸としたマーケティングの設計図~熱量を生み、育て、広げるには

ソーシャルディスタンスを保つからこそ実現できる、オンラインミートアップの新たな設計図

ファン同士の交流/長時間の参加にもハードルが

3. ファン同士のコミュニケーションを設計しづらい

 通常のオフラインミートアップでは、ファン同士が同じ熱量を共有しあえるということも価値の一つになる。オフラインミートアップの事後アンケートを読むと、「同じようにブランドを好きなファンの方と出会えてよかった」という回答をいただくことは少なくない。参加者は自分と同じファンと会話を交わすことで安心するのだ。以前対談をさせていただいた『ファンベース』の著者である“さとなおさん”こと佐藤尚之さんも、日本人は極端に自信のない国民なのだとおっしゃっている。

 しかしオンラインのミートアップでは、ブランド担当者が参加者と会話を交わすことはできても、参加者同士で会話を交わすことは難しくなる。そのため、参加者同士の会話ができる仕組みをプログラムの中で設けるか、参加者がミートアップ中にお互いの意思を表明できるような演出が必要になる

4. ながら行動/細切れの時間での参加が前提に

 オフラインミートアップの最大の強みは、「時間も場所も共有し、今その場にいる参加者全員が同じコトに向き合う」状態を作れることになる。現代において、実はこの体験は稀有な環境だ。スマホとネット環境が普及した現在、人々は「ながら行動」に慣れきってしまっている。テレビを観ながらTwitterをする、友だちとLINE電話をしながら受験勉強をする、同じ部屋にいる恋人同士でもメッセージアプリ上で会話をするということは日常風景だろう。

 そのようななかで、オフラインミートアップは、その場に集った参加者が他の情報に邪魔されることなく、ブランドに向き合って時間を共有してもらうことができる貴重な場だった。現代において、ブランドがこのような状況を作り出すことは極めて難しい。

 しかしオンラインになった途端に状況は一変する。画面越しのコミュニケーションでは、話を聞いてくれてはいるかもしれないが、スマホで友だちにLINEをしたり、Twitterを見たり、他のことをしながら参加している人も出てくるかもしれない。家族や友人に話しかけられたり、お子さんのいる家庭だと参加を中断せざるを得なかったりという状況も考えられる。

 オフラインだと半日や一日かけて行うミートアップも珍しくないが、オンラインでは、一つの画面を長時間座りっぱなしで覗き込んでもらうことは不可能に近い。ある程度まとまった人数を拘束できる時間は限られてくることを前提にしなければならない。

オンラインミートアップで熱量を高めるには?

 このように見ていくと、オンラインミートアップは非常にハードルの高いものに思えてくる。しかし、今我々が直面している課題は、「一時的な非常事態をどう乗り越えるか」ではなく、「withコロナと言われる状況が続き、世の中のルールが変わりつつあるなかで、いかに新しいかたちのコミュニケーションを生み出していくか」である。

 ミートアップにも、オンラインだからこそできる、今後の世の中のルールに適応したやり方があるはずだ。むしろそのやり方によって、これまでにない熱量の高まりをつくれる可能性もあると筆者は考えている。ここからは、これまで見てきたオンラインとオフラインの特性の違いを踏まえ、オンラインでファンの熱量を高める手がかりを3つ紹介したい。

1. 参加者のコミットメントを促す仕掛けを準備する

 オンラインミートアップでは、会場で商品を参加者に触ってもらうような体験を提供することはできない。そうした体験をしてもらうには、商品を事前に配布するか、参加者自身に購入してもらってから参加してもらう必要がある。つまり参加者に、ミートアップへのコミットメントを求めることになる。それは参加者にハードルを課す反面、ミートアップへ参加する上での主体性を高める効果もある

 またオンラインでの開催によって、ミートアップの情報をSNSでシェアしやすくなることも考えられる。オフラインと違い、「ながら参加」をある程度許容される関わり方をするため、ブランド担当者や主催者のトークを聞きながら、その情報をハッシュタグ付きでSNSに投稿することもやりやすくなる。それを踏まえて、主催者側からシェアしてほしいコンテンツをチャットなどで参加者に共有するといった手段も、オフラインの場合以上に有効になるだろう。

 このように、商品を事前に購入してもらったり、ファンにSNSシェアの役割を担ってもらうなど、より主体的な参加を促すことで参加者のコミットメントを高める仕掛けが考えられる。

2. 非同期なコミュニケーションを逆手に取る

 オフラインでは人と人がリアルな場で会話するため、主催者と参加者、参加者同士のコミュニケーションは必然的に同期される。しかし、オンラインでのコミュニケーションの場合、主催者が進行するコンテンツに対して、急に参加者から質問をしたり、参加者同士で会話を交わしたりすることは基本的に難しくなる。

 しかしその特性を応用し、たとえばメインの進行は画面上で行い、Zoomなどのチャット機能で参加者からコメントをもらったり、YouTubeでライブ配信をしながらTwitterでは特定のハッシュタグでコメントのやりとりをするといった進行も可能になる。テレビの放映にたとえると、メインのコンテンツを配信するYouTubeが主音声、サブの機能としてハッシュタグで参加者同士が盛り上がるTwitterが副音声といったイメージだ。

 このように主催者と参加者のコミュニケーションの非同期性を活用することによって、オフラインでのミートアップよりも参加者から多くのインタラクションを得られ、結果的に満足度を高める設計にできる可能性もある

3. 「感動の追体験」を呼び起こすコンテンツを用意する

 筆者がオフラインミートアップの支援をする際は、当日のプログラムの中に必ず「感動の追体験」という要素を入れることをオススメしてきた。「感動の追体験」とは、ファンがその場に集った際に「私はこのブランドを好きでよかった」と思い出させてくれる体験だ。

 ファンはミートアップに招待された際、必ずしも自分がその商品を好きな理由を自覚して参加するわけではない。当日予定が空いていて、なんとなく良いと思ったから応募して招待されているケースも少なくない。その際、たとえば商品をミートアップの冒頭で体験したり、自身のファンとしての遍歴を紹介してもらったりすることで、ファンは自分がその商品を好きになった理由を思い出し、「なぜ好きだったのか」を言語化しやすくなる。それにより、ファンのブランドに対する関わり方はグッと能動的になっていく。このことは、オンラインでの開催でも変わらない。

 ただしこれをオンラインで行う場合には、商品に直接触れてもらうことができないというハードルを乗り越える必要がある。そのためには、「感動の追体験」を呼び起こすコンテンツを事前に用意しておくことがポイントだ。具体的には、過去のイベントの映像や、ブランドムービー、それが難しければ社員のメッセージでも良い。ファンに対して感動を呼び起こさせるきっかけをコンテンツ化し、オンラインで届けることで効果が得られる。

 オフラインの場合、大型スクリーンや立派な音響設備を用意することが難しくても、オンラインであれば画面のすべてにその映像を映し出すことができる。対面しているファンに対して、オフラインよりもオンラインの方がコンテンツへ引き込む力が強くなる場合もあるはずだ。

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オンラインだからこそ生まれる熱量を模索しよう

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この記事の著者

高橋 遼(タカハシ リョウ)

1983年生まれ。2010年株式会社トライバルメディアハウス入社。クリエイティブディレクター。ファンを軸としたマーケティング戦略・実行に従事し、これまでに航空会社、ファッションブランド、スポーツブランド、化粧品ブランド、飲料メーカーなどを担当。著書に『熱狂顧客戦略』(翔泳社)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/05/13 07:00 https://markezine.jp/article/detail/33313

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