今、企業がカスタマーマーケティングに注目すべき理由は?
それでは、カスタマーマーケティングとは具体的にどのようなもので、これまでのマーケティングとは何が違うのでしょうか。
従来のマーケティングとの大きな違いは、自社都合ではなく、顧客志向であること、顧客の成功を支援することにあります。「顧客志向」と言うと、当たり前だと思う方も多いかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか?「顧客志向」とは、たとえばこのようなイメージです。
•自社のプロダクトのユーザー一社一社、一人一人の顔を思い浮かべて、顧客企業のビジネスモデルや業界全体のトレンド、社内の現在の課題、ステークホルダーや意思決定のプロセスなどを解像度高く理解し、その企業が自社プロダクトを利用して課題を解決し成功するための方法を、一対一ではなく一対Nの手法で届ける。
•顧客のサクセスストーリーを、「なぜ自社プロダクトを選んだのか」だけではなく、「どのように自社内で成果を出したのか」という観点で可視化する。
•同時に、顧客から得られたインサイトをプロダクトやマーケティングメッセージにフィードバックし、改善していくサイクルを回す。
これは従来、まだ見ぬ「顔のない」潜在顧客に対して、企業主体のメッセージによりデマンドを喚起することが多かったマーケティング組織にとっては大きな転換ではないでしょうか。
消費者の行動がどんどんデジタル化・オンライン化し、検索すればたくさんの情報を得ることが可能になった今、企業からの一方的なメッセージによる広告やキャンペーンの効果はどんどん下がっていると言われます。一方で、BtoB購買プロセスの84%は紹介経由であるとも言われています。マーケティングコンテンツとして最も効果が高いのはユーザーの声であり、事例であり、最強のリードは既存顧客からの紹介であると言う点は、マーケティング経験のある方であれば誰もがうなずくところではないでしょうか。
企業からの一方的なメッセージングが潜在顧客に刺さりづらくなっている中で、既存顧客に対してサクセスを支援するマーケティング施策を行うと同時に、潜在顧客に対してもサクセスを中心としたマーケティング・コンテンツを届け、既存顧客から潜在顧客への波及を狙う。これが、カスタマーマーケティングが目指すところだと私は考えています。
次回は、カスタマーマーケティングがどのような面で効果を発揮するのか、そして実践するためにどのようなアプローチを行っていけば良いのかについてお伝えしたいと思います。