長期的視野「3年」
既に世界経済はリセッション(景気後退)が発生したばかり。今後はディプレッション(恐慌)に向けて進む可能性を認知し、それに向けた気構えの入れ替えと、新たな準備が必要になる。
COVID-19の感染や被害は、数ヵ月後の夏にはピークを越えて「いずれ収まるだろう」と期待を作ってしまう。この心理的な「時限期待」こそが、COVID-19がくせものたる所以なのだ。少し値を戻しただけで「ほっとした」株式市場が存在し、さらにそれらの土壌には、債権市場、為替市場が綱渡りを行っており、国境を越えた地球政治が大きな引き金を持っている。これらの発動から回復のスパンは「3年以上」の歩幅だ。実際に日本の平成バブルが「失われた20年(30年)」を作ってしまったのを忘れてはいけない。
株価市場の暴落と上げ戻し この先に起きる変化
米連邦準備制度理事会(FRB)が休日関係なき議論の結果として、2020年3月15日(日曜)に異例のゼロ金利を決定発表した(図表1)。

ところが翌日の株式市場は歴史的な暴落に至っている。この超巨大な、良いはずのFRB施策に対して市場がネガティブに反応したのは、これまでの理論では説明できない巨大市場からの大きなシグナルである。
FRBの金利の急激な利下げは米国の先例だが、今後、英国・日本を含むG7先進国各国は「中央銀行による利下げ」と「政府による景気対策の追加投入予算」を両輪同時に発表する。米国政府による「220兆円(2兆ドル)緊急支援、一人1,200ドル/1ヵ月分配布案」を筆頭例にして、日本でも今後同様の「数十兆円単位」の対策が用意される。
米国の中央銀行による利下げをゼロにまで落とした施策が意味するのは、これで金利による打ち手は使い果たした、の言い換えである。政府は「無制限の量的緩和」という名の、FRBの無制限「お金の増刷」による資金注入が残るだけになる。この史上最大級の220兆円級の「無制限劇薬」を投入して、果たして足りきるのか。さらに「効き目がない」ときにどのような状態になるのか。海の向こうでのサウジアラビアとロシアによる原油の需給価格競争が、世界経済に大きく作用する引き金を持っている影響が強い。
悲観ばかりではなく、生まれ変わる良さもありえる。たとえば「さらなる減税」政策の加速が予測されれば、事業側には追い風である。既に連想されていることとして「思い切った無税(減税等のタックスクレジットとして返却)」、「中国依存経済からの離脱」、「自国回帰モードが世界トレンドになり、グローバリズムと自国主義との新たな調和へ」、「超長期(50年レベル)の新型債権の登場」、「ベイルインの自力資本が主導の経済(政府による財政緩和抜きの経済)への法整備が進む」、「実現の難しかった宇宙や医療産業への無税での支援」といった夢や希望も予測されている。
マーケティング業界における新しい芽
そして旧マーケティングの領域では、「データの共有」が社会的理由から寛大になる(なってしまう)と筆者は予見する。COVID-19の拡大防止などの社会的と思われる用途に向けて、を名目としたデータ収集が進む。つまり、個人や企業がデータを共有しあうことに関するハードルが下がる。
既に米国の「巨大企業」の一部は、データの包括を想定内として着実に準備を進めている。たとえば在宅勤務の覇者と思われている「ZOOM会議」が、その脆弱性を指摘されているのも、単なる一時期のブームではない「3年先」を見る巨大企業のサービスに収斂される始まりかもしれない。