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オンラインの特性を活かし満足度の高い場を作るには?ウェビナー・イベント設計に教育学の知見を取り入れる

オンラインだからこそできることに目を向ける

――とは言っても、オンラインには「顔を見せてもらえない」「集中して参加してもらえない」といったやりにくさもあります。

小田:顔を見せてもらうためにはどうすればよいか、という議論をするのではなく、顔が見えないことをどう利用してやるか、という考え方を持つと良いと思います。ラジオの感覚で、お便りを送るようなイメージでチャットにコメントをしてください、と一言伝えるだけで、参加者の関わり方も大きく変化します。様々な「制約」は、場をデザインするヒントになるのです。

――なるほど。

小田:オンラインで最も特徴的なのは、空間が同期していないことです。画面の向こうにはそれぞれ違う環境が広がっている。それをどう活用できるかと考えてみます。

 プライバシーの問題はありますが、たとえば、その人の生活の一要素を活かすコンテンツができるかもしれない。たとえば、オフラインのイベントに子どもを連れてくるのは難しくても、オフラインだと逆に子供と一緒に参加しやすいですよね。「ちょっとお子さんに絵を描いてもらってみてください」というようなアクティビティを何かのきっかけとして取り入れても良いかもしれないですし。カメラをオフにして、みんなで寝転びながら会議をしてみよう、なんて場があっても良いかもしれません。空間が同期していないからこそできることは、意外と多いのではないでしょうか。

 あるいは、同じタイムラインの中でやる必要がないことも、大きな可能性です。集まってくる人とは現在どのような関係性で、今後どのようになってほしいのかを考え、こうした要素を織り交ぜていくことが必要だと思います。

参加者に役割を用意し、関係性を立ち上げる

――場を用意したものの、一体感やコミットメントが生まれない、具体的には、発言やコメントをしてほしいのにしてくれない、などの悩みも多そうです。

小田:関係性を立ち上げるためのデザインがポイントになります参加者に「お客さん」として場に参加してもらうのでは、運営側が期待しているようなインタラクションは起きません。より主体的に参加してもらうためには、役割を分けてあげることが必要です。

 使いやすいのは教育の現場でよく使われている「ジグソーメソッド」と呼ばれる手法です。参加者に異なる役割を与えることで、協力をする必然性を引き出すことを狙います。

小田:まだ始まったばかりで、具体的な学習の意欲が沸いていないのにも関わらず「○○について考えてみましょう」、と言われてもなかなか難しいですよね。全員が同じテーマについて同じまなざしから考えるのではなく、〇〇について顧客視点から考える人、技術視点から考える人といったように役割を分担し、役割ごとのグループに分かれて対話してから、全体を統合して捉えるグループワークを行ってみる。まず役割を限定することで参加をうながす方法は、オンラインでも使いやすいと思います。

――確かに「自分の役割は果たさないと」という気持ちになりますね。

小田:オフラインだと、同じ場にいると誰かの動きを見て誰かがそれに影響を受けて動き始める、といったようなインタラクションが生まれやすいのですが、オンラインは良くも悪くも“場の力”が働きにくいので、「お互いがなんのためにここに参加しているのか」「グループの中でどういう役割をもっているのか」を明示してあげることがより大切になってきます。

 それは運営側が振り分けてしまってもいいし、あるいは主体的に選んでもらってもいいと思います。「今日は4つ役割が用意されています。あなたはどれに参加したいですか」のように聞いてみる。選んでもらったうえで参加してもらうと、選んだからにはやらなくては、というマインドが働いたりするんですよね。単純な運営側と参加者という関係だけではなく、参加者の間に関係が立ち上がってくる。そうすると自ずとインタラクションが起きてくるはずです。

語り出してもらうための“ナラティブな発散法”

小田:オンラインでパフォーマンスを発揮しやすいのが、「ナラティブな発散法」と呼んでいる方法です。簡単に言うと、個人で考える時間をちゃんととりましょうということ。個人で考えを深めたうえで語りだすところから、インタラクションをスタートします。

1. 個人で考えを深める
2. 深めた考えをナラティブに語る
3. グループでさらに考えを膨らます

という3つの構造でワークを構成していくと、ワークが立ち上がりやすいのです。

小田:オフラインの場では、周りの様子が気になってしまったり、誰かに話しかけたりしてしまって、個人ワークは難しい一方、空間が切り離されているオンラインは、集中した個人ワークがやりやすい良さがあります。

 そのため僕たちは個人ワークの時間と休憩時間を合わせて長めに設定し、個人で考えを深めてもらうようにしています。

 アイデアについて話してもらう時も、オフラインとは違う視点をもっています。オフラインでは瞬発的に生まれるインタラクションからアイデアが展開していく、いわゆるブレインストーミング的なアプローチが効果的な場合もありますが、オンラインではそうしたインタラクションのリズム感がどうしても欠けてしまいがちです。時間をしっかりととって深めた考えを話してもらうことを大切にし、数よりも質を重視するほうが、オフラインとは違った価値を生み出していくのではないかと考えています。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/33493

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