情報洪水時代、単発・不定期ウェビナーで十分なのか?
前回までの記事では、「リテールマーケティングオンライン」という、3月上旬に行った4日間の単発企画ウェビナーにおいて、私が実際に取り組んだことをお伝えしてきました。当時は、まだ事態がここまで深刻化するというシナリオを描けていなかったのです。しかしその後、私たちが出展を予定していた展示会やセミナーなどが続々と「中止・延期」となり、よりオンラインへの取り組みを加速度的に増していかなければならない状況になっていきました。
【前回までの記事はこちらから】
第1回:ある日突然、オフラインイベントが開催不可に。コロナ禍で戦うBtoBマーケターの挑戦【イベント企画編】
第2回:まずは自分でやってみる!サラリーマンの必要技能に「ウェビナー」スキルが加わった
私が説明するまでもなく、今は情報洪水時代。“さとなおさん”こと佐藤尚之さんが『ファンベース』(筑摩書房)で述べられた言葉をお借りすると、「情報の砂一(すないち)時代」です。私たちが伝えたい情報は、相手にとってはたった「砂の一粒」。気づいてもらうことすら大変な時代です。これは、BtoC商材だけではく、BtoBのコミュニケーションにも当てはまることと思っています。1スタートアップ企業の「情報」を「届けたい人に届ける」こと自体の難しさを知っている私たちのチームは、この状況を鑑みた結果、単発ウェビナーを不定期開催するだけでは、質・量ともに継続的なコミュニケーションを行うことは困難であると考えはじめました。
従来までは、マーケティング部が担当する「数多くの展示会やセミナー」で出会った方の「アンケート」から、インサイドセールス部門へのバトンが生まれ、受注につながっていく……という流れが作れていました。しかし今回の環境下、様々なファネルで従来手法の機能不全が露呈していったのです。
たとえば「アンケート回収率」と「開催頻度」。何気ないセミナーアンケートですが、実はかなり多くのコミュニケーションヒントがあります。オンラインになったことで、当初のウェビナーではアンケート回収に苦戦しました。開催頻度においても、私たちは、外部セミナー・展示会など日常的に数多く接点を持っていたのですが、従来までは、“マーケティング部主催の定期ウェビナー”はゼロでした。そこに月1程度のウェビナーを仕込んだくらいでは、従来までの(企業全体の)事業活動目標をヘッジなどできないことが見えていました。
スライドの一工夫でアンケート回収率をアップ
では、どうするか。それは、「日々の改善のトライあるのみ」です(笑)。
アンケート回収においては、聴講者の視聴環境を鑑み、投影スライドに常時固定バナーを設置しました。テレビ番組で見かける「dボタンを押したときにでてくる情報窓」のような役割です。「ウェビナーあるある」なのですが、従来までのセミナーよりも途中入退場の聴講者が多くなります。そんな方にいつでもアンケート回答ができる環境を用意しました。
こちらは、とあるウェビナーをご一緒した方のスライドがこのスタイルをとっており、マネをさせていただきました。OBSなどの配信ソフトを利用すれば、ワイプやテロップで対応できますが、ワンオペ配信でのZoomだけでは実施できませんので、スライドの「作り」を改善したのです。具体的な数値は開示できませんが、通常のお礼メールでのアンケート回収に加えて、回収数を底上げする施策となっています。また、もちろん、QRやメールだけでなく、ウェビナー進行トークの中で視聴者に話しかけて、コメントをしていくことも大切です。
「週刊コンテンツ」を作り定期的な接点を作る
ウェビナー開催頻度は、増やしました。ただし「通常のサービス・製品説明会」を定期開催するだけでは、“視聴者と継続的に接点をもつこと”にはなりえないと考えました。1回の接点で、私たちのサービス・プロダクト理解が叶えばそれでよいのですが、情報洪水な時代では、あっという間に忘却されるだけです。
では、どうしたか。定期的な「週刊番組」を作り「毎回ゲストを変える」という、ラジオやテレビのような週刊コンテンツを作っていきました。当初は、私の担当する「水曜日」を定例化したのですが、テーマに合わせて、他の曜日も他のチームスタッフが番組編集長となり、運営を定型化していきました。今では、月曜〜木曜日は、何かしらのPodcastやウェビナーが行われている体制となっています。私を含めた6名のチームで、週に3番組を運営しています。
運営はとても大変ですが(笑)、ゲストが毎週変わっていることもあり、定期的に聴講いただいている方もおります。ゲストは社外のマーケターのケースもありますが、弊社内のカスタマーサクセス部門のスペシャリストが登場するなど、従来のオフラインセミナーでは実施できなかったコンテンツも、「ウェビナーだからこそ」の強みを活かして作ることができます。