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MarkeZine Day 2020 Summer Kansai(PR)

「顧客とは一期一会」から脱却 不動産仲介会社がMarketo Engageで目指すコミュニケーション

 多くの人にとって「家を買う」ことは一生に一度のビッグイベントだ。しかし、物件購入の検討から実際の購入に至るまでの期間は、意外と短い。不動産会社にとってそのタイミングを把握することは、最重要課題となる。住まい全般の事業を手掛ける福屋不動産販売では、MAツールの「Marketo Engage」を導入し、ユーザーの属性や段階に応じた最適なコミュニケーションで、顧客エンゲージメントを高めていると言う。6月19日に開催された「MarkeZine Day 2020 Summer Kansai」に同社の大江健太郎氏と、アドビでMarketo Engageコンサルティング部のマネージャーを務める冨田洋平氏が登壇し、その取り組みを語った。

不動産仲介は「顧客との接点が限定的」が共通課題

 「Marketo Engageは、長期的なエンゲージメントを行うことに長けたツールです」と語るアドビの冨田氏。同ツールは、BtoBであれば匿名から顧客になり、ロイヤル顧客になるまで、BtoCであれば認知から購入、ファン化、再購入に至るまでという長期的なエンゲージメントの実現に向けた、マーケティングのコントロールタワーとして機能すると言う。

 現在このMarketo Engageを活用する福屋不動産販売の大江氏は、導入に至った背景として同社の抱えてきた課題とその解決に向けた取り組みを説明した。

(左から)アドビ Marketo Engageコンサルティング部 マネージャー 冨田洋平氏、福屋不動産販売 総務企画部 営業推進課 スペシャリスト 大江健太郎氏
(左から)アドビ Marketo Engageコンサルティング部 マネージャー 冨田洋平氏、
福屋不動産販売 総務企画部 営業推進課 スペシャリスト 大江健太郎氏

 不動産売買の仲介を事業の柱とする同社では、そもそもユーザーとの関係を構築するうえで(1)商機は物件の売買検討の数か月間のみと短い(2)顧客とは一期一会の関係(3)デジタルマーケティングの環境と体制が整っていない、という3つの課題があった。

 多くの人にとって、マイホームの購入は一生に一度の大きな買い物である。しかし、ニーズが顕在化する、購入検討の期間は一生のうち短ければ数カ月程度しかない。そのため、顕在化した顧客との接点は限定的であり、また獲得した接点は一過性につき、常に新規の顕在化したユーザー獲得が必要になってしまう。これを解決するのは大江氏が実現に取り組む、検討時期にとらわれないコミュニケーションだ。

ライフステージに応じたコミュニケーションを設計

 大江氏は「たとえば家を購入するプロセスは、家を買うための情報収集や物件検索、比較検討といったもので、期間は短ければ数ヵ月で成約に至ります。この商機を見逃さないのは当然ですが、その数カ月だけに対して接点獲得の施策を実施するのではなく、それ以外の時期から接点を獲得できていれば、ニーズが顕在化する数カ月のプロモーションがより効果的になると考えています。目指しているのは各ユーザーのライフステージ毎に最適させつつ、手段や手法を変えながらも長期間継続するコミュニケーションです」と説明する。

 たとえば、顧客が日常的に使うSNSでの情報発信だ。福屋不動産販売のTwitterでは不動産情報をほとんど発信せず、暮らしをテーマに家庭菜園や料理レシピ、漫画などを日々配信し、幅広い層とつながっている。

 一方、賃貸からマイホーム購入を考え始める、いわゆる準顕在層には、家探しのポイントや家づくりのポイント、住宅ローンに関する情報などのコラムコンテンツを発信することで訴求。実際に物件を探すタイミングでは、SEO対策やWeb広告でニーズをキャッチアップする。検討段階ではメルマガといった会員コンテンツで比較のしやすい情報を提供し、しっかりと接点を獲得し続ける。

 さらに、契約に至った際もそこで終わらせず、その後のアフターフォローや限定情報・限定特典の提供、役立つ情報の発信によって関係を継続していく。これにより、10年後のリフォームや30年後の住みかえが必要になれば、そのタイミングで商談につなげられるのだ。

 しかし、このコミュニケーションを実現するためには、各チャネルでのコミュニケーションを最適化すること、それらチャネルを統合的に管理することが必要となる。

成果のないメルマガにメスを入れる

 同社では以前もメルマガの配信は行っていたのだが、前述のような関係を構築するには至っていなかったと言う。「(2)顧客とは一期一会」という課題は、メルマガ配信などの取り組みに対して目標設定が無かったため、効果測定が行われないままに運用されていたことが要因だった。

 同社は2014~2018年の5年間で約4万件の契約実績があり、全成約者の中からメールアドレスを保有している全顧客を対象に設定し、メール配信ツールで定期的にメルマガを配信していた。しかし、使用していた配信ツールでは、送信メールの開封可否しかわからず、効果測定に必要な分析データを取得できていなかったのだ。また、スポーツ観戦チケットのプレゼントキャンペーンなどを定期的に実施していたものの、応募はいつも同じユーザーで固定されていた。

 大江氏は、効果の検証と環境構築までの道のりを次のように説明する。

 「まず3カ月間、Excelで数万のリードに対し、開封や応募などのスコアを手作業でつけてみたところ、到達率や開封率、応募率など様々な課題が見つかりました。次の3カ月でツールはそのままに、プレゼントを家電や宿泊券に変更、提携企業に期間限定の特典付きメニューの提供を依頼するなど配信コンテンツを刷新し、また、今後のメルマガへの要望を取得するためのアンケートも内製で作成しました。その結果、様々な項目で改善が見られ、少しですが売上貢献できる成果が出ました」(大江氏)

 大江氏はこれらの結果から「スコアリングにかかる時間が削減でき、専門知識が必要なLPやアンケートのコーディングをノンプログラマーでも簡単にできるならば、かけたコスト以上の成果が出せる」と判断し、MAツールの導入を進めたと言う。

 「最終的には半年かけて十数社を比較検討しました。弊社が行いたい内容を実現できることから導入したのが、Marketo Engageです」(大江氏)

体制づくりの鍵は「一元化」

 いちばん深刻な「(3)デジタルマーケティングの環境と体制が整っていない」という課題は、大江氏が入社した2016年から顕在化していた。そもそも、WebディレクターやWebマーケター職の人員が同社にはいなかった。また、同社は2016年1月にサイトを全面リニューアルし、スマートフォン対応としたが、この対応時期は同業他社の後塵を拝していた。

 さらに、各サイトは担当事業部が個々に発注して制作・運用していたため、権限や予算にばらつきが生じていた。何よりWeb施策は個々の事業部が業者へほぼ丸投げの状態だった。大江氏は「まずは環境と体制を一元化する必要がありました」と、当時を振り返る。

 こうした課題を克服すべく、各事業部で行っていた各サイトを段階的に刷新し運用を一元化、SNSやメルマガなどのコンテンツは主幹部署を変更し、コラムなどのサイトを新たに制作し運用体制を構築した。2016年1月にリニューアルしたサイトは、2017年秋から約2年を掛けて、再度ゼロからの構築を敢行し2019年9月にフルリニューアル。それを持って各施策の予算と権限を一元化し、Webマーケティングが実施可能な体制づくりが完了した。

 「コンテンツの運用・改善の体制とプロモーションなど予算管理の一元化により、効率的に施策ができるようになりました。ノウハウの蓄積がしやすくなり、施策の連動もタイムリーにできるようになったのは大きなメリットです」(大江氏)

 3つの課題のうち、基礎となるWebマーケティングの体制づくりが解決できたことで、2020年以降は残る2つの課題である「商機は物件の売買検討の数か月間のみと短い」「顧客とは一期一会」に対しても解決に乗り出す。

 大江氏はこの2つの課題に関しては、コミュニケーションで解決できると話す。そのコンセプトが「個別の最適化」と「連携での最大化」だ。またそれぞれに3つのポイントを語った。

アンケート自動化でコスト削減、最適なデータ管理へ 

 個別の最適化のポイントは、「コンテンツの最適化」「データ活用の最適化」「顧客情報の最適化」だ。

 WebサイトやSNSなどのチャネルそれぞれでアプローチできるターゲットは異なるため、コンテンツごとにKPIを設定して目的を明確にする必要がある。今後は、各チャネルそれぞれに対して個々のKPI達成によるコンテンツの最適化を目指す。

 また最適なデータ活用を行うために、収集したデータをデジタル化し、活用できる形式で蓄積する。大江氏は「データ収集で留意するべきは『集めたデータを何に使うのか』を明確にすること」と述べ、手段と目的を切り分ける重要性を強調した。さらに、顧客情報の最適化では、データを基にパーソナライズされたコミュニケーションができるよう「必要な人に」「必要な情報を」「適切なタイミングで届ける」の3点の精度を今後どこまで高められるかがポイントとなる。

 ここで冨田氏がこれまでの具体的な取り組みを尋ねると、大江氏は成約後のアンケートの自動化とその活用について説明した。Marketo Engageの導入以前は3名の専任のスタッフが、月初は残業をしながら作業にあたっており、アンケートの郵送により運用コストも高かったが、導入後はアンケート配信と回答者データのリスト作成を自動化することで、作業時間が大きく短縮され、1名少ない2名のスタッフにもかかわらず残業もなくなり、コストも80%のカットに成功した

 また、Marketo Engageに蓄積しリスト化された回答者のデータをBIツールと連携し、成形・可視化することで、現状把握やレポート作成もスムーズになった。回答者リストを上書きするだけで最新の状態となるため、レポート作成にもほとんど時間がかからないと言う。

他企業とのコラボも積極的に取り組む

 一方、「連携での最大化」では「コンテンツ間の連携」「グループ間の連携」「他企業との連携」がポイントとなる。

 コンテンツ間の連携では、IDやパスワードの共通化や連動企画、キャンペーンなどでコンテンツ間のユーザー遷移をいかにシームレスに行えるかがポイントとなる。たとえば現在、コラムとTwitterとメルマガを1つのコンテンツでつなぎ、ユーザーの遷移を促す取り組みなどを行っている。また今後は、LINE公式アカウントの機能を充実させ、同アカウントから会員登録が可能となっているサイトとの連携を強化させつつ、LINEの友だち獲得施策をTwitterとの連動企画で実施していくことも検討している。

 グループ間の連携では、同社グループ(FUKUYAグループ)全体の窓口として顧客とコミュニケーションをし、不動産売買の仲介だけでなくリフォーム・リノベーションなどといったニーズにも対応できる体制を整えた。大江氏は「部門を横断的に連動・連携させていくことで、グループの様々なサービスを、顧客ニーズに合わせて提案・提供することができます」と説明する。

 さらに注力しているのが、他企業との連携だ。不動産会社だけでは提供できない「顧客メリットの創出」を、他業種の企業と連携して提供する

 現在、同社では単発企画としてSNSやメルマガなどで食品メーカーやアウトドアメーカーなどとのコラボキャンペーンを実施しているほか、2020年からは一年を通して殺虫剤メーカーと協力し、コラムやメルマガなどでの情報発信や該当商品のプレゼントキャンペーンの実施を行っている。今後はさらに様々な企業と様々な形式でのコラボレーションができるよう、環境を整えていくとのことだ。

 最後に大江氏は、「個別の最適化により、ユーザーとの最適な距離感を追求し、連携での最大化によりユーザーメリットの最大化を追求します。この二本柱を実現することで課題解決を目指しています」と総括し、講演を締めくくった。

ユーザーの声を基に考えるデジタルマーケティング進化論

 アドビは2020年6月に、新たなホワイトペーパーを公開しました。顧客との関係を構築し、収益を向上させていく上で必要不可欠な「収益プロセス」の考え方とともに、デジタルマーケティングの成熟度を高めるための戦略や施策を紹介しています。本セッションにも登場した「Marketo Engage」がマーケティングチームにもたらすメリットも解説。ダウンロードはコチラから。

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この記事の著者

鈴木 恭子(スズキ キョウコ)

 東京都出身。週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社。「Windows Server World」「Computerworld」などの記者・編集を経て2013年にITジャーナリストとして独立。主な専門分野は組込系セキュリティ。現在はIT(Information Technology)と...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/29 10:00 https://markezine.jp/article/detail/33661