「DX」はエンターテインメント業界のビジネスモデルを変革する1つの手段
タレント・アーティストのDXが求められている第一の理由として、スマートフォンの普及にともなってメディアが多様化し、エンドユーザーがテレビから分散したことが挙げられます。テレビを視聴しているのは主に50~60代、デジタルは主に10~30代と視聴者世代が明確に分かれているのが実情です。
広告主にとって、商材のターゲットが若年層であれば、テレビよりもデジタルに予算を投下したいと考えるのは必然です。その上、コンテンツ・広告接触者の属性情報や購買行動などのデータを得やすく、広告効果を検証しやすいメリットがあります。
さらに芸能事務所にとっては、広告以外の面でも、デジタルコンテンツの楽しみ方として当たり前になっている「課金」を収益源にできる可能性が広がります。
このように、タレント・アーティストのDXは広告主や芸能事務所に大きな恩恵をもたらしますが、ただ闇雲にデジタルコンテンツを制作すればいいわけではありません。タレントのファン層や商材のターゲット層によってはテレビを活用したほうが効果的ですし、書籍やCDが最適な場合もあります。
FIREBUGにも「YouTubeチャンネルを開設したい」「Instagramで発信したい」といったご依頼を頂きますが、それはあくまでも各論です。収益を確保しなければタレント・アーティスト活動が継続できない以上、チャネルを選ぶ前に確かなビジネス戦略が必要になります。DXは、それ自体が目的なのではなく、各タレント・アーティストが能力を発揮して表現したいこと(Will)を実現し、効果的に収益を得るための手段なのです。
いきものがかりもメディアマップで戦略を立てている
一例として、FIREBUGがお手伝いさせている「いきものがかり」のケースを簡潔にご紹介します。どのようなプロジェクトでも同様ですが、まず、タレント・アーティスト自身が実現したいことをヒアリングしてビジョンを共有し、データを分析して戦略を立て、その達成に必要なスタッフを集めてチームを組みます。
いきものがかりの場合には、「国民的アーティストである」「国民的ソングをつくる」というビジョンを掲げて、新たな大ヒット楽曲の創出に取り組んでいます。この目標を達成するために、活動のプラットフォームとなる従来のマスメディアとデジタルメディアを整理する必要があります。その簡略マップがこちらです。

若年層に狙いを定めたタレント・アーティストであればデジタルメディアにおける活動に注力することが有用だと思いますが、いきものがかりは「国民的」なポジションを見据えた戦略が必要です。そのため、DXを推し進めるとともにマスメディアも積極的に活用しています。