お客様の内面にアプローチしてLTVを伸ばす
中川:その他に、習慣化ループを回すために大事にしていることはありますか。
後藤:不満の解消だけでなく、快楽につながる体験を提供することです。単純な家事代行だけでは習慣化にはつながりません。たとえば、掃除もクッションやぬいぐるみの置き方など細かいところに気を配り、部屋の空間を作ることを意識しています。そうすることで空間にエネルギーが生まれ、お客様からも「あのベアーズレディさんが来て家が明るくなった」と評価いただけるようになるのです。
中川:今のクッションの置き方など、細かな気配りは『カイタイ新書』で解説している触媒に当たると思いました。歯ブラシのミントのようになくても成立するけど、それがあることでついついまたそのサービス・商品を使いたくなる要素を指すのですが、空間のエネルギー作りはまさしく触媒です。
後藤:部屋を綺麗にすることだけに注力していたこともあったんですが、それだけだとお客様の満足度が上がらないことがわかったんです。綺麗にするだけでなく、お客様の内面にアプローチしてポジティブな気持ちになってもらうことが重要だと思いました。
中川:ベアーズレディとお客様の関係性が深くなると、スタッフが辞められるときに解約につながる可能性はありませんか。
後藤:辞めてしまうベアーズレディの方がいると確かに大変ですが、きちんと会社が間に入ってお客様に継続いただけるアプローチをしています。たとえば、お客様の生活リズムや家事代行の履歴をもとに、最適なスタッフを新たにアサインします。お客様によっては、2名アサインして合っているほうを選んでいただくこともあります。
今後は五感にアプローチする仕掛けを
中川:最後に、今後行っていきたい施策などを教えてください。
後藤:『カイタイ新書』の中で、触媒はおもしろい指摘だと思っていて、弊社でも触媒を活かした広告やコミュニケーションを仕掛けたいと思っています。これまでお客様のインサイトなどを捉えて施策を考えてきましたが、五感に響く施策ってあまり考えたことがありませんでした。
広告も基本は聴覚と視覚に訴えかけていますが、たとえばベアーズ専用のアロマを開発して、お客様のお家で掃除した後に使わせていただく。その香りが良ければ、「ベアーズが掃除をした後はいい香りがする」と嗅覚を通じてよい顧客体験が生まれると思います。そういった五感をフル活用した顧客体験を生み出したいと思っています。
中川:ありがとうございました。90%が定期利用をしているベアーズのマーケティングは、習慣化のベストプラクティスだと思いますし、多くの企業では見逃されがちな触媒にも着目されているのが素晴らしいです。読者の皆さまも、「なくても成立するけど、それによってより商品・サービスを使いたくなる工夫」をぜひ意識していただければと思います。