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究極の製品差別化の糸口を「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」から紐解く【論文紹介】

2020/08/03 08:00

 日本マーケティング学会が刊行する『マーケティングジャーナル』の内容を噛み砕いて、第一線で活躍中のマーケターに向けて紹介する本連載。今回のテーマは「究極の製品差別化」について、「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」の切り口から紐解きます。

目次
この記事は、日本マーケティング学会発行の『マーケティングジャーナル』Vol.40, No.1の巻頭言をもとに、加筆・修正したものです。

究極の製品差別化

 「カスタマイゼーション」および「パーソナライゼーション」は、ニーズの異なる顧客一人ひとりに対して異なる製品を提供するほどの究極の製品差別化である。

 そもそも「製品差別化」という概念は、マーケティングの鍵概念の筆頭と言いうる概念だ。かつて、A・W・ショウは、競合製品と違うように改良された製品は、経済学が説くところの「市場価格」より高い価格を付けられると主張した。これが史上はじめてマーケティング活動に言及したといわれる学説である。以来、100余年、マーケターは、改良された製品を案出しようと試みてきた。それが製品差別化である。

 製品差別化という概念の下では、「マス(大量生産型)マーケティング」が否定され、「セグメント(細分型)マーケティング」や「ニッチ(隙間型)マーケティング」が指向されてきた。より最近では、P・コトラーによる“ニッチを狙うマーケティングでも広すぎる”という言葉の通り、「ワントゥワン」対応が指向されている。その具体的な方策が、顧客の注文を受けて供給を行う「カスタマイゼーション」と、個々の顧客のニーズを解析して供給を行う「パーソナライゼーション」なのである。 

「ハイタッチ」か、「ハイテク」か

 サービス(無形財)は、有形財よりも、パーソナライゼーションが実行しやすい。サービスの生産現場には、典型的に、顧客に一対一で対応する接客員が存在するからである。たとえば証券会社のサービスを想像すればよい。有形財のように量産されるというより、担当者が出迎えてくれて個別対応してくれる。彼らによる手厚いサービス提供を「ハイタッチ」と呼ぶが、これが昨今「ハイテク」によって代替されつつある。証券口座アプリのようなものがそれである。

 それでは、「ハイタッチ」はこのまま「ハイテク」に置き換わるだろうか。この点に着目したのが、小野譲司教授(青山学院大学)・酒井麻衣子准教授(中央大学)・神田晴彦上級研究員(野村総合研究所)の論文(PDF)である。この論文によれば、サービス品質に対する顧客の評価を高める効果は、「ハイタッチ」に見られ、「ハイテク」に見られないという傾向が観察された。たとえば、AIによるオススメ提示サービスは、接客員によるそれと同じく、ワントゥワンなサービスであるにもかかわらず、サービスの平準化というネガティブな感情をもたらすということである。

 そして、この傾向は、ヘビーユーザーよりライトユーザーに見られる。そのため、「ハイテク」への置き換えは、新規顧客獲得には不向きである。著者は、ネット証券会社に見られる独立系フィナンシャル・アドバイザーの活用のような打開策が有効であると論じている。

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