オススメ(レコメンテーション)サービスのパーソナライゼーション
ハイタッチにせよハイテクにせよ、接客員やAIによるオススメ提示のバラエティは、重要な課題のひとつである。たとえば、幾つかの業界では、店頭にて接客員はしばしば顧客にオススメを行っているし、電子商取引の場面においては、「この製品を検索/購買した人は、この製品も検索/購買しています」という説明書きと共に、オススメ提示を行う実務が盛んに行われている。
しかし、この企業行為、実は、学術的には「選択困難性」を高める危険性があると警鐘が鳴らされている。それゆえ、慎重にオススメを提示する必要がある。この点に着目したのが、千葉貴宏准教授(関西大学)の論文(PDF)である。
オススメといっても、焦点となる製品と同種の製品群を提示するか別種の製品群を提示するか、また、同種の製品であっても、似た製品群を提示するか異なった製品群を提示するか、といった幾つかの選択肢がある。著者の分析によると、同種の製品を幾つか提示するのが好ましく、また、そのなかでも、製品に精通していない消費者には、互いに異なった製品群を提示する一方、製品に精通している消費者には、候補となる製品に似た製品群を提示するのが好ましいという。

CvSS(Customization via Starting Solution)への警鐘
カスタマイゼーション分野の学術研究の花形は、顧客の注文をどのように受け付けるかに焦点を合わせた一連の研究群である。従来型の「注文どおりに作りますので、ご指示ください」という方式では、多数の部品が生み出す無限の組み合わせの可能性の中からどの組み合わせを注文してよいか、多くの顧客は戸惑ってしまう。
そこで提唱されたのが「完成見本先行提示型カスタマイゼーション(CvSS)」である。顧客は、提示された幾つかの完成見本の中から一つを選び、その見本の改良したい箇所を指摘するだけでよい。この注文方法の有効性を主張する学派に後押しされて、最近のカスタマイゼーション実務には、パソコンにせよスニーカーにせよ、CvSSが盛んに採用されている。
しかし、満足いくカスタム製品を注文できるということだけが、カスタマイゼーションが顧客に提供する価値ではない、と主張するのが、森岡耕作准教授(東京経済大学)の論文(PDF)である。これまでの論文が、既製品より高くあるべきカスタム製品の「製品価値」の探究を目指していたのとは異なり、この論文は、注文過程の楽しみ、「過程価値」も考慮に入れるべきだと説く。そして、CvSSは後者の価値を減じるシステムであり、スキルフルな顧客には適さないと著者は警鐘を鳴らしている。