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デジタルトランスフォーメーション~分断を乗り越えて

AOKI、JTBのデジタルキーパーソンに聞く DX推進のためにしたこと・するべきこと

 歴史のある企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためには何がポイントになるのでしょうか。店舗を中心としたビジネスを展開するAOKIホールディングスの事例を見ていきましょう。

一人で始めたCRMプロジェクトがグループ全体の動きに

 本連載では「伝統的企業のデジマ組織がDX推進のためにどう働きかけたか」をテーマに、JTBにおいてDX推進に携わっていらっしゃるWeb販売部 データサイエンスセントラル(以下、DSC)統括の福田晃仁さん、副統括の山上亜紀さんと様々な企業事例の本質を掘り下げていきます。

 JTBにおいて福田さん、山上さんが推進してきたデジタル変革の詳細については連載「JTBが挑むデータドリブン戦略 立ち上げから運用まで」をご覧ください。

――第一回ではAOKIホールディングス デジタル・CRM推進室 室長の吉田亮さんをお招きし、DX推進の取り組みとそのポイントをうかがいます。まず吉田さんに、御社を取り巻く事業環境とこれまで展開されてきたデジタルマーケティング戦略についてお聞きしたいと思います。

吉田当社は1958年の創業から、ビジネスウェアの販売を中心に「ファッション」「ブライダル」「エンターテイメント」事業を展開してきましたが、60年以上CRMは手付かずの状態が続いていました。

 それが変わったのは、2016年頃のこと。

 会長から「グループで保有する3200万人の会員基盤を用いて、何かできないか」と発信があったことをきっかけに、一人組織として出発しました。

 行動する前にまずは目的を決める必要があると思い、

  1. マスマーケティングからデータドリブンマーケティングへの移行による施策の精度向上および販促費の効率化
  2. グループ各社間の相互送客による会員のLTV向上
  3. 会員データを活用した新規ビジネス立ち上げによる収益拡大

上記の3本の柱を提案したところGOサインが出たので、その実現のために動き出したんです。

AOKIホールディングス 吉田亮氏
AOKIホールディングス 吉田亮氏

福田:会長から直接打診があったんですか?

吉田:話自体は当時情報システム本部本部長だった(現常務取締役、情報システム・デジタル担当役員)照井にあり、適任者を探していた照井から私にお呼びがかかりました。

 当時私はファッション事業の販促部門で、100億円ほどの予算を与えられマスマーケティングを担当していました。実はMBA取得のために会社を辞めて香港に行こうと考えていたときで、留学費用も既に支払ってしまっていたのですが、こんな機会はまたとないだろうと引き受けることに。

 そうして一人で顧客データ活用プロジェクトを始動し、はじめにやったのは販促費の削減でした。そこから捻出した予算で、セールスフォースが提供するMA「Salesforce Marketing Cloud」(以下、Marketing Cloud)を導入しました。

福田:予算枠を現業から創り出したということですね。

JTB 福田晃仁氏
JTB 福田晃仁氏

吉田:導入後ファッション事業の会員のリピート率が向上し、効果が明確に出たので、ブライダル事業でも活用するようになり、実績を重ねるうちにCRMやデジタル活用の動きがグループ全体へと広がっていきました。

福田:どの段階までおひとりで進めていったんですか?

吉田:当初は自分一人でしたが、ファッション事業でMA施策を行うなかで数名増え、そのうちファッション事業のECやインバウンドも見るようになりました。さらにグループ各社のデジタル支援も行うようになり、当時の規模では限界を感じていたところ、2019年1月にグループの顧客データベース統合が行われることになりました。そのタイミングで、ファッション事業の株式会社AOKIから親会社の株式会社AOKIホールディングスへと組織ごと移してもらう提案をし、現在は20名体制になっています。

システムとマーケを自在に語ることを要求される現代のマーケター

――仕入や在庫管理などの基幹系システムとマーケティングデータの接続という点では、これまでどのような取り組みをされているのでしょうか。

吉田:当社が扱っているデジタル関連システムは、人事や会計などの「事務系システム」やPOSデータなどの「店舗系システム」、「顧客システム」、「物流系システム」、「EC系システム」など多岐にわたり、3事業ごとに存在します。

 顧客情報に関してはグループの統合顧客データベースを構築しているので、日次でグループ各社から最新のものが入るようになっています。マーケティングデータはMarketing CloudにPOSやECからのデータを日次で格納しています。

 ただそこからメール配信となるとクエリを書く必要が出てきます。一部の計算処理量が多いシナリオについては、負荷が高く1時間ぐらいかかっている状態でした。BigQueryにデータが格納されていれば数秒で処理できるのでBigQuery側へのデータ移行(データ流通・蓄積経路の最適化)を進めています。BigQuery側でクエリを走らせて結果をMarketing Cloudに飛ばせるようにする構想です。

福田:各ブランドのマーケティングデータをMarketing Cloudでどのように持つかはJTBとしてもかなり工夫をしています。BigQueryに各ブランドラインのマーケティングデータを前処理する形で集約しているんですね。

 吉田さんのようなトップマーケターの方とお話ししていると、このようにシステムとマーケティングの両方に縦横無尽に話が及びます。少し前の時代では、マーケとITは今よりもずっと距離がありました。前回の連載ではマーケティング施策から逆算してシステムを設計する重要性をお話しましたが、現代のマーケティングでは、「テクノロジーとマーケティングの融合」を行えるプレーヤーが、これからのトップマーケターに求められる条件なんだと実感します。

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この記事の著者

江川 守彦(編集部)(エガワ モリヒコ)

東京大学文学部を卒業後、総合広告代理店でマスメディアの媒体営業業務を経験し、出版社に転じて人文系の書籍編集に従事したのち、MarkeZine編集部に参画。2018年よりオーガナイザーとしてMarkeZine Dayの企画にも携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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