プッシュ型の提案を通してポジティブな態度変容を促す
――位置情報は、とてもフィジカルなデータですね。
春日:そうなんです。我々の本業はあくまでフィジカルなビジネスで、大きく掲げているのは安心安全な街づくりです。位置情報でわかる人の動きは、もちろん建物づくりや街づくりに有効ですが、それには時間もかかります。一方で、KARTEとデータ基盤を通して、ポジティブな方向へ行動変容を促すことは短期間でできます。
たとえば“三密”を避けるために様々なペインが生じている今だと、ビルの共用ラウンジや喫煙所、店舗などの混み具合が、オフィスフロアから降りる前にわかるといいですよね。「今は混んでいますが、空き始める1時間後に使えるクーポン出しておきますね」といったプッシュ型の提案ができると、人の流れは変わるかもしれません。そうした方向での活用には、BtoC事業だけでなくビル管理や運営といったBtoBの担当者からも高い関心が寄せられています。
――街づくりというフィジカルなシーンにもKARTEが貢献している状況を、サービス提供側として髙栁さんはどうご覧になっていますか?
髙栁:街自体がフィールドであることは、とても興味深い点です。KARTEはCXプラットフォームですが、三菱地所さんほどの規模感になると、いわゆる市民の体験のアップデートも視野に入ってきます。シチズンエクスペリエンスという要素に対して、我々も考えを深めているところです。
コロナ禍でリモートワークが一気に進んだ今、「この街に行く理由」が薄れています。今後は、選ばれる街になるために、体験のアップデートがより必要になっていくのではないでしょうか。
デジタルの風呂敷を広げ、オン・オフを問わず楽しめるように
――壮大なプロジェクトの進展が楽しみですね。最後に、今後の展望を聞かせてください。
春日:今年中から来年前半にはCDPの実運用を目指し、顧客への情報提供や提案に取り組んでいく予定です。各事業が個別に進めていたデジタルサービスも一元化して、ロイヤルティマネジメントにも貢献したいですね。オフラインの施設とオンラインを跨いだ顧客体験を提供することで、一人ひとりの体験がアップデートされるのではないでしょうか。
リアルな場所には愛着が生まれやすいため、これまではそこに頼ってきたところもありました。ですが髙栁さんのご指摘のように、働き方の変化などによってその愛着の拠り所も変わると想像しています。今後は意識的に、街を行き交う人との関係を深めていきたいです。たとえば健康や食、アートといったリアルならではの切り口も視野に入れ、大きくデジタルの風呂敷を広げた上でフィジカルな活動を再構築して、有機的に街を楽しめるようにしたいですね。
――その構想を、両社はどのように支えていきますか?
吉田:引き続き、事業間の連携とオン・オフの連携という2つの“つなぐ”部分を支援していきたいです。KARTEとまた別のシステムを組み合わせ、最適な仕組みを構築することで、より良いDXを推進する一助になれればうれしいです。また、プレイドさんとは過去のプロジェクトを通して、新たな機能や使い方を研究し反映してきたので、今後もKARTEの拡張に寄与できればと思っています。
髙栁:もはや“PDCA”ではなく“DCPA”、まずやってみて検証するサイクルの時代になりつつあるのではないでしょうか。そんな環境を提供できるプロダクトとして、KARTEをさらに進化させたいですね。三社の連携でCX、DX、EXの好循環も加速できると思うので、街における良い体験の提供を引き続きご支援したいです。