ビジョンが変わればアイデアが変わる
では、このビジョンによって何が変わってくるのか。創造的破壊を生み出すDisruptionメソッドにおいては、破壊する既成概念やビジョンを実現するための戦略アイデアが変わってきます。
破壊的思考法「Disruption」とは?
TBWAが提唱する、創造的破壊を促す思考法のこと。「1、Convention(コンベンション)=既存の市場やプレーヤーを見渡し”破壊すべき既成概念”を発見する」「2、Vision(ビジョン)=既成概念を破壊した先の“あるべき理想の姿”を明確化する」「3、Disruption=既成概念を破壊し“ビジョンを実現するアイデア”を開発する」という大きく3つのステップから成り立つ。
▼創造的破壊を促す思考法「Disruption」の詳細については第1回をご覧ください。
競争戦略から“創造戦略”へ ニューノーマルをつくる破壊的思考法
今回のスーツに見える作業着を仮に「作業着」というカテゴリーで捉えた時に敵となる破壊すべき既成概念(Convention)は「作業着は作業の時に着るもの」、あるべき理想の姿(Vision)は「いつでもどこでも着ることができる作業着」、既成概念を破壊しビジョンを実現するアイデア(Disruption)を「スーツに見える作業着」と捉えることもできたでしょう。
しかし(繰り返しになりますが)、今回関谷代表にお話を伺ってこのカテゴリーの捉え方が作業着でも、スーツでも、アパレルでもなく「見た目に関する人々の価値観」であることがわかりました。このカテゴリーで改めてスーツに見える作業着が破壊する既成概念を定義すると「人は人を見た目で判断する」という人々が暗黙に囚われている価値観(=見た目バイアス)となり、その既成概念を破壊した先にある「見た目バイアスからの解放」というビジョンを実現する戦略アイデアとして、従来は身につける人の個性を表現するために個性的だったファッションアイテムをあえて没個性にすることで内面の個性を引き出すいわば「個性を際立たせるニュートラル」があると考えました。
そして、その戦略を実現するプロダクトアイデアのひとつとして「スーツに見える作業着」があると捉えられます。こうしてビジョンの捉え方を変えることで戦略アイデアの捉え方も変わり、それを実現するプロダクトやサービスのアイデアも変わってきます。

この「個性を際立たせるニュートラル」という戦略アイデアの場合には、他に実現する手段として「革靴に見える安全靴」や「スーツケースに見える工具箱」といったプロダクトアイデアも考えられます。自社を新しいステージに進める上で新しいアイデアが必要と感じた時には、まずはビジョンを見直してみることが有効になる場合もあるのです。
今回は既存ブランドに込めた想いを紐解く形でビジョンの見つけ方をご紹介しましたが、これから新たに企業やブランド、製品をニューノーマルなものにしていくべく新たなビジョンを検討している方は、Vision Composingにある問いをもとに考えてみてはいかがでしょうか。