9割の店頭POPは使われていない
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は共同印刷が提供を開始した、配信サイネージ一体型ゴンドラ什器のデジタルゴンドラについて、プロジェクトリーダーを務める領家さんにお話をうかがいます。
まず、今回デジタルゴンドラを提供するに至った背景について教えてください。
領家:デジタルゴンドラの提供を開始したのは、現状の店頭販促が抱える3つの課題に対応するためです。1つ目の課題は、従来の店頭販促に多くのムリ・ムダが発生しているという点です。
たとえば、我々は印刷会社として様々なメーカーの店頭POPを制作していますが、作成されたもの全てが実際に店頭で使用される訳ではありません。使用率は流通によって違いますが、我々の調べではメーカー支給のPOPのうち、1割程度しか店頭に置かれていないケースも少なくありません。
販促について議論をするのは小売りの本部とメーカーですが、実際にPOPを設置するのは店舗スタッフのため、企画意図通りに販促物が活用されないことも多いのが現状です。また、小売店側では設置作業の複雑化によって業務負担が増えています。従来の店頭販促からの見直しが求められているのです。
MZ:メーカーが支給したもののうち、9割が廃棄されていることもあるということですか。それは知らなかったです。
領家:共同印刷はSDGs(持続可能な開発目標)にも注力しているため、地球環境に配慮した新たなソリューションの開発が必要だと考えました。
デジタルサイネージの活用にも課題が
MZ:2つ目の課題はなんでしょうか。
領家:デジタルサイネージが上手く活用されていないことについてで、原因は2つ考えられます。1つはデジタルサイネージと商品・売り場が連動していないことです。デジタルサイネージが商品と距離が離れた店頭に設置されており、商品価値を訴求できず、購買促進につながっていないケースが多いです。
もう1つは、インパクトの弱さです。商品のそばにあっても小型であまり目を引かなかったり、大型であってもすぐ別商品の動画に切り替わったりして、無視されてしまっているのが現状です。
MZ:では、3つ目の課題もお願いします。
領家:3つ目はコロナ禍で生まれた様々な課題です。店頭デモや試食、サンプリングなどができず、非対面・非接触の施策へのシフトが求められ、買い物も短時間かつまとめ買いになる傾向が強まっています。これらの現状を踏まえると、新たな販促手段が求められていることがわかります。
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デジタルゴンドラが提案する、売上につながる販促の形
MZ:では、デジタルゴンドラがこれらの課題をどのように解消していくのか探りたいと思います。同サービスの特徴を教えてください。
領家:デジタルゴンドラは大きく以下3つの特徴を備えています。
1.販売什器とデジタルサイネージの一体化
2.動画配信の設定がCMS(コンテンツ管理システム)で簡単にできる
3.クラウドでコンテンツをリアルタイムに一括管理できる
まず「販売什器とデジタルサイネージの一体化」に関しては、商品から最も近い位置に大きなサイネージがあるので、お客様の目を引くことができます。
さらに、小売店の現場目線では、什器と一体になっているためサイネージや販促物の設置業務がいりません。これまでは、デジタルサイネージを設置しても本来の目的と違う形で使われるケースもあったと聞きますので、メーカー・小売店双方にとってメリットが大きいのではないかと思います。
次に、「動画配信の設定がCMSで簡単にできる」に関してです。CMSは什器単位で管理できるものを用意しており、各動画の配信設定などが行えます。たとえば、開店前に「各デジタルゴンドラにこの商品を設置してください」といった指示を表示することもできるので、オペレーションの効率化にも活用できます。
また、配信するコンテンツを時間別に切り替えられるため、この時間はメーカーの商品販促、この時間は小売店のセール案内といった出し分けが可能になります。
3つ目の「クラウドを利用したリアルタイム配信管理」に関してです。デジタルゴンドラはクラウドとつながっているため、メーカーや小売店本部などが直接各店舗にコンテンツを一括配信することが可能です。これにより、店頭販促業務の煩雑化や、メーカーと小売店本部の企画通りに販促施策が実施されないといった課題を解決することができます。
コスト面の問題もサブスクで解消
MZ:これだけリッチな什器だと来店者の目を引くでしょうし、クラウドによる配信管理など、メーカーや小売店のオペレーションもしやすいんだろうなということはわかりました。しかしながら、店頭POPに比べたらコストが割高になるのではないでしょうか。
領家:導入コストは、月額定額課金のサブスクリプション方式を採用してハードルを下げています。什器設置の初期投資は必要なく、安いものだと月額30,000円から利用可能です。1年以上契約いただいた場合は什器を無償貸与し、2年目以降は継続割引も行います。
MZ:ちなみに、小売店とメーカーのどちらがデジタルゴンドラの利用料を払うのでしょうか。
領家:基本的な利用料は小売店様にお支払いいただきます。現在我々が提案を進めているのは“小売店様を中心とした販促媒体化”で、小売店様にメーカー様や卸様と利用料や割引を条件に交渉いただくスキームです。
小売店様はデジタルゴンドラによる媒体収入を得ることができ、また空き枠で店舗やプライベートブランドに関する販促も行うことが可能です。メーカー様や卸様も、デジタルゴンドラを販促媒体の枠として購入することで、店頭でも良い面に商品を置けるようになるので、両者にとってWin-Winの販促活動ができるのではと考えています。
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展示会での反応も上々/小売店チェーンとの実証実験も予定
MZ:今回リードエグジビションジャパンの「第2回店舗運営EXPO夏」に出展中のタイミングで取材させていただいていますが、来場者の方の反応はいかがでしょうか。
領家:ブースの前を通る方の多くが什器の写真を撮っていかれますね。また、現在5パターンの什器を用意していますが、「自社向けにカスタマイズしたものが欲しい」といった意見もいただけました。今後はそうしたオリジナル什器の製作にもチャレンジしていきたいと考えています。
また、同業他社の方からも、什器とデジタルサイネージの一体型であることを高く評価していただきました。
MZ:ちなみに、本格的な提供はこれからになると思いますが、すでに導入が決まっている企業もいるのでしょうか。
領家:現在は提案中の企業が多いですが、一部小売店チェーン様と実証実験を行うことが決まっています。今期中には10社を目標に導入を進め、多くの小売店でデジタルゴンドラが並ぶ状態を作っていきたいです。
今後はデジタルサイネージファーストな動画制作にチャレンジ
MZ:今回のデジタルゴンドラ、どういったニーズを持つメーカーや小売店に使ってほしいですか。
領家:まず、チェーン展開している総合スーパー(GMS)様やスーパーマーケット様、ドラッグストア様ですね。いま特に求められているのは、メーカー支給販促物偏重な点からのシフトです。デジタルゴンドラの導入を通じて小売とメーカーの両者がWin-Winになる売り場の実現ができたらと考えています。
また、メーカー様に関しては、化粧品などの直営店舗を運営されているような企業様に使っていただきたいですね。コンテンツ次第で高級感を出すなどブランドに合わせた販促が可能になりますので。
MZ:では、最後に今後の展望について教えてください。
領家:これまでの店頭POPなどの販促に課題を感じていた方々へ積極的に提案活動を行っていきたいと思っています。今回展示会にも出展しましたが、今後も多くの企業様に知っていただいて、日本全国様々なところにデジタルゴンドラが置かれるようになればと思います。
また、我々のほうで動画コンテンツの制作もできるので、デジタルサイネージファーストな販促に効く動画を企業様に提供したいと考えています。デジタルゴンドラは複数面の画面があるので、通常のテレビCMの素材を流すだけよりも、複数面を活かしたクリエイティブがあるとより効果が出せると考えています。
動画コンテンツを作るメンバーは、様々な店頭POPの制作実績を持つ販促のプロばかりです。商品を引き立たせるシズル感、プロジェクションマッピングのような立体感など、各商品に合わせた販促動画を作ることができます。そういったコンテンツ制作の面でも実績を作りたいと思います。
MZ:販促の市場はかなり大きい一方で、デジタル化が遅れている印象があったのですが、デジタルゴンドラのようなサービスの登場を契機に、より販促のデジタルシフトが進むと感じることができました。領家さん、本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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