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COVID-19がマーケティング・営業にもたらした3つの変化

調査でわかった3つの変化

 では、早速比較した結果をご紹介します。今回得られたのは、以下の3つの示唆です。1と2はマーケティング、3は営業に関する変化になります。

  1. 買い手の情報収集と売り手の情報発信、両方がオンラインで活発化
  2. 新しい情報収集チャネル「チャット」が存在感を増している
  3. 営業担当者の連絡手段が電話からEメールへ。取引(商談)の成約数は低下

1.買い手の情報収集と売り手の情報発信、両方がオンラインで活発化

 コロナ禍で、買い手側の情報収集の手段は大きく変化しました。これまでは展示会やセミナーなどのオフラインの接点も非常に重要でしたが、コロナ禍で多くの展示会は中止に。セミナーはウェビナーとしてオンライン開催されるのが当たり前となりました。

 そして、我々の調査でも、企業Webサイトへのアクセス数が世界全地域で増加していることが明らかになりました。コロナ前のQ1とコロナ禍のQ2で比較すると、Q2のほうがグローバルでは16%、日本では13%増加していたのです。外出制限が強化され、多くの企業がテレワークを推進するようになったことで、オンライン上での情報収集が活発化したと推測できます。

Webサイトトラフィック(グローバル)HubSpotユーザーが運営する企業Webサイトへのアクセス数(セッション数ベース)
Webサイトトラフィック(グローバル)
HubSpotユーザーが運営する企業Webサイトへのアクセス数(セッション数ベース)

 また、情報収集で大きく変化したのがEメールです。全世界でメルマガなどの送信数が3月後半から急増し、Q2とQ1を比較すると21%もグローバルで増加。そして驚きなのが、日本の送信数の変化です。なんとQ2がQ1に比べ149%増加と世界最大の増加率となりました。また、開封率もグローバルで9%増加しており、情報収集の手段が限られているからか、マーケティングEメールに対するエンゲージメントが高くなっていることがわかります。

マーケティングEメールの送信数と開封率(グローバル)
マーケティングEメールの送信数と開封率(グローバル)

2.新しい情報収集チャネル「チャット」が存在感を増している

 我々の調査によると、買い手からのチャットでの問い合わせが増加していることがわかりました。HubSpotではコミュニケーション機能という、企業のFacebookページやWebサイト上のチャットを一括して受信することができる機能を用意しています。その数を計測するとQ1の終盤から徐々に増加。Q2とQ1を比較した結果、グローバルでは31%もチャットでの問い合わせが増えていたのです。

買い手からのチャットでの問い合わせ(グローバル)
買い手からのチャットでの問い合わせ(グローバル)

 ベンチマークデータと比較してみても、週を追うごとに増加しており、直近ではコロナ前の平均から50%以上増加している週もありました。日本でHubSpotを導入している企業様からも「Webサイトにチャットを導入したい」というご相談を多数いただいています。

 チャットは新しいコミュニケーションチャネルですので、もしかするとコロナの影響がなくても一定程度の普及は進んだかもしれません。ただ、後ほどデータでご紹介する「電話がつながらない状況」などを受けて、多くの買い手が電話に代わるリアルタイム双方向コミュニケーションツールを求めており、その1つとしてチャットは今後も世界的に導入が進んでいくのではないかと、私は考えています。

3.営業担当者の連絡手段が電話からEメールへ。取引(商談)の成約数は低下

 最後の示唆は営業回りの変化です。まず、HubSpot上に記録されている営業担当者のコール履歴を調べたところ、世界的に電話の本数は激減。Q2にグローバルで16%減少し、日本のHubSpot利用企業様からも「客先のテレワーク導入で、オフィスの電話にかけてもつながらない」などの声がありました。

 そして、これにより増えたのが、営業担当者によるEメールです。グローバルではQ2に44%も増加しました。しかし、それと反して返信率は24%も減少。マーケティングEメールに対しては開封し反応するのに、営業のEメールにはなぜ返信してもらえないのでしょうか。

営業担当者からのEメールの送信数と返信率(グローバル)
営業担当者からのEメールの送信数と返信率(グローバル)

 私はこの理由を、買い手にとって今は情報収集の段階であるからだと考えています。提案を受ける前に企業から来るメルマガ、Webサイトなどを通じて情報をある程度集めてから、営業担当者との打ち合わせに臨みたいのではないかと推測しています。

 このように営業からのアプローチが全体的に機能しなくなってきたことから、HubSpotのCRMデータを見ても、成約数が一時大きく落ち込んでいることがわかりました。一時は対ベンチマークデータでマイナス40%まで下がり、Q2とQ1で比較すると11%も減少しました。

 現在は少しずつコロナ前の成約数に戻りつつありますが、旅行業界やエンターテインメント業界などCOVID-19の影響を大きく受けている業界はいまだ厳しい状況となっています。

ニューノーマルの中で求められるマーケティング・営業とは

 ここまで、COVID-19がもたらしたマーケティングと営業の変化について解説してきました。では、3つの変化に対して、どのような対策をすることが求められているのでしょうか。これも以下の3つにまとめましたので、ご紹介します。

  1. オンライン上で「見つけてもらった」後、
    マーケティング施策で適切に見込み客をフォローする仕組みの構築
  2. 新しい情報収集チャネル「チャット」が存在感を増している
  3. 営業コミュニケーションの質向上

1.オンライン上で「見つけてもらった」後、
   マーケティング施策で適切に見込み客をフォローする仕組みの構築

 調査からもわかるように、買い手の情報収集のオンライン化が著しいスピードで進んでいます。そのため、売り手側の企業もオンライン上で見込み客をフォローしていくことが求められます。

 具体的には、ブログや動画コンテンツ、デジタル広告などを通じてオンライン上で見つけてもらいリード化。Eメールなどを通じてコンテンツを届ける仕組みを構築していきます。その上で「もっと事例コンテンツ、サービスに関するデータが知りたい」「営業に相談したい」などニーズが出てくるので、それに合わせてダウンロードコンテンツを作成したり、営業部門への引き渡しフローを整備したりすることが重要になってきます。

2.チャットの活用

 我々としては、チャット機能の活用がこれだけ伸びているので、ぜひチャットは導入してみていただきたいなと思っています。HubSpotでもWebサイトでのチャット機能を完備していますし、その他にもFacebookページでのチャットやTwitterの運用を通じた双方向のコミュニケーションなど、様々なチャットのツールは整っています。そのため、チャットというものを企業のマーケティング・営業のプロセスに取り込んでいくことが重要なのではないかと考えています。

3.営業コミュニケーションの質向上

 多くの人の働き方が変わってきている中で、営業部門も今の時代に買い手から望まれる営業コミュニケーションを再検討し、その質を向上させていくことが非常に重要です。

 もちろん、企業の規模や組織体制によって、営業の課題は様々です。たとえば、Webサイトのトラフィックが増加し問い合わせも増えて、フォローが間に合わないのであれば、見込み客をいくつかのステージに分類。その上で、Eメールを送るのか、電話でフォローするのかなど、コミュニケーションフローを再設計していくべきです。また、営業担当がオンライン化の対応に追われて作業が煩雑化しているのであれば、我々のような企業のツールを導入して各プロセスの自動化を検討するのも1つです。

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買いたいように買えるマーケティング、営業が必要に

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:46 https://markezine.jp/article/detail/34296

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