ホットリードが2年で270%に/獲得コストも60%減
こうしてSales Cloudをフル活用し、Salesforce活用を軌道に乗せてきた原田氏が次に着手したのがPardotを活用したマーケティング改革だった。
当時は展示会で収集した名刺情報が1万5,000件ほど蓄積されていたが、年に数回案内メールを送る程度で、十分に活用されていなかった。そこで各セールスパーソンの保有名刺を、スキャンまたは写真撮影してデータ化するよう依頼。情報登録時に業種と市場を含めることでターゲティングを行い、セミナーの集客に活用した。
「現場の営業に手間を取らせてしまいますが、最初にきちんとデータを蓄積することが重要だと考え、個々人の持つ名刺データが集客・営業活動の資産になること、それを活用する価値やメリットを繰り返し伝えました。
最初にPardotを活用したときはターゲットとなる約8,000名に案内メールを送信したところ、1日足らずで70席のセミナーが満席に。そのセミナーは好評で地方都市で追加開催することも決定。営業部門からは『名刺情報を登録して、マーケティング部門に頼めば、セミナーの集客をしてくれるらしい』という良い噂が広がっていきました」(原田氏)
それからコンテンツマーケティングをスタート。限られた対象者にメールマガジンを送り、サイトへ遷移して資料をダウンロードしてくれた人に対してインサイドセールスが架電するプロセスを取り入れた。
その結果、2017年12月には90,000人の名刺データが登録され、その後2年でホットリードの数は270%にまでアップし、その獲得コストは60%削減できた。こうした取り組みが奏を功し、「データやマーケティング活動からも商談が生まれる」ということが浸透し、全社的な意識改革が起こっている。
サトーのマーケティングと営業活動に大きな変化をもたらしたPardot。原田氏にとってはどのような存在か、と質問すると「弓のようなもの」と答えてくれた。
「僕は、コンテンツマーケティングは弓道やアーチェリーみたいなものだと思っているんです。Pardotが弓で、メールマガジンやダウンロード資料などのコンテンツが、顧客のもとに飛んでいく矢。そして、名刺データは的。この3点がなければ、サトーのマーケティング活動は成しえません」(原田氏)
現在同社では、Sales Cloudを商談管理や取引先情報の可視化、過去の見積もり情報管理などに、Pardotはメールマガジンやウェビナー情報の配信に活用。特に、1件あたり10分以上かかっていた過去の見積もり検索が1分ほどで完結できるようになり、大幅な工数削減が実現できた。
“利用”されているだけで、“活用”されていなかった
このように、順調に進んだように見えるサトーのSales CloudとPardotの活用だが、驚くべき事態が起こる。2019年3月に、ある営業所長から「Salesforceのダッシュボードがそんなに便利なんて知らなかった」と言われたのだ。
そこで原田氏は急いで全国59人のマネージャーにヒアリング。するとSalesforceを営業活動に活用していたマネージャーは全体の18%にあたる11人だけだったということが判明した。原田氏は打ちのめされたような気持ちになったと、当時を振り返る。
「その頃、確かに全社的な営業会議でSales Cloudのグラフが“利用”されるようになってきてはいました。けれど、日常的な営業活動に使われるほど“活用”されていなかった。マネージャーのマインドも行動も変化していなかったことに、衝撃を受けました」(原田氏)
その後原田氏は「全マネージャーと1on1を行う」ことを決断。定着化活動の専任メンバーを置き、59人のマネージャーに対して年4回の1on1を行うことにした。
1on1の際は各営業所での困りごとを聞くことに徹した。「Salesforceを使ってください」「なぜ使ってくれないんですか?」と、活用を強制するような言葉は一切使わないというルールも定めた。定着化活動には、Salesforceの定着化活動専用のダッシュボードを作成し、その状況を週次で確認することにした。そして実際1on1を始めてみると、マネージャー一人ひとりの本音が次々とわかってきたと原田氏はいう。
「たとえ繰り返し社内セミナーを行っても集合研修では自分ごと化するのが難しく、知識も定着しにくいことがわかりました。一人ひとりと話をしたことでCRMツールは苦手だとか、ハイテクなものなんて無理、まだ使わなくていいと他の営業所長と話していた、といった本心が次々と明らかになりました」(原田氏)
そこで1on1の際に、入力したデータがセミナーの集客や、インサイドセールスにパスするためのリード獲得に使われていることを地道に伝え、マネージャーたちと各拠点のダッシュボードを一緒に見ながら、数字の見方や商談進捗状況を聞いていくことにした。
「大切にしたのは、こちらの要望を押し付けるのではなく、マネージャーたちの意見に共感を示すことです。定着しなかったのはあくまでも私たち運用管理者側の責任。どうすれば使いたくなるのか徹底的にヒアリングすることにしました」(原田氏)