理想は「気づいたらブランド資産になっていた」
ここまで、「ブランド資産につながるコンテンツとは何か?」を整理してきた。
予算を大きくかけたリッチなコンテンツや、話題性に富んだコンテンツがブランド資産を作るのではない。顧客のパーセプションを変える強度があり、誰に・どうやって届けるのかを設計し、実行の意義を中長期的に担保できているか。これらを満たしたコンテンツの積み重ねが、認知や獲得などの目的を達成し、気づけばブランド資産になっていく。
冒頭で紹介した、三井住友カードとReproのコンテンツ群は、多岐にわたっていた。そこには、1つのサイトやメディアですべてを対応しようと考えるのではなく、目的に合わせて複数のメディアを運営し、コンテンツを積み上げていく戦略があったのだ。
しかしながら、「コンテンツマーケティング」には論点が多い。そこで實川氏は、コンテンツマーケティングの因数分解と掲げ、その多数の要素を分解した表を提示した。

分類軸に、自社のサービスやプロダクトの特性、ターゲットユーザーの環境やマーケティングの軸など6つの切り口を取り上げ、「まずはコンテンツマーケティングの“どの分野”から始めるか、状況を整理しましょう」と語る。
戦略レベルから戦術レベルまで、コンテンツマーケティングの施策は、企業が置かれている前提条件や商材特性によって、大きく変わってくる。
たとえばBtoBのReproの場合、競合他社と比較され、その検討時間も長い。サービスサイトに充分な情報拡充を行い、継続的にメールマガジンを配信し、見込み顧客と関係を継続するコンテンツが必要だ。一方の三井住友カードは、比較サイトの閲覧や口コミ調べはあるものの、Reproほどコンバージョンまでに時間がかかることはないだろう。SEOコンテンツで、他のコンテンツよりも詳しく、有益な情報をいかに盛り込むかがポイントだ。コンテンツマーケティングを実行に移す前に、商材やサービスの特徴を理解するほか、環境整理を行いたい。
ブランディングの前に、獲得をやり切る
続いては、コンテンツを目的別に整理した表が紹介された。この表を用いると、「目的別にどんなコンテンツを作り、何のKPIを追うべきか?」がチェックできる。

その上で實川氏は、「対象の商品やサービスが、マーケティングのどのフェーズにいるか。その判断を最優先に行いましょう」と話す。
「ブランディング目的のコンテンツマーケティングでも、通常の広告やSEOで獲得をやり切っておくことが重要です。ブランディングは、より費用対効果が問われますし、一般的には獲得の次のステップに、中長期的なブランディングを考えます。先に、成果が可視化されやすい領域からはじめることがオススメです」(實川氏)
さらに福田氏は、表の8から降順にステップを進めるのが正攻法とアドバイスする。
「私はSEOコンテンツからスタートし、3年ほどかけてようやくエンゲージメントコンテンツに着手できるようになりました。ブランディングコンテンツSEO向けの“キャッシュレス読み物”作成も2018年からです」(福田氏)
實川氏も、世の中に出てくる成功したブランディングコンテンツの事例は、あくまで特異例と指摘。「2匹目のどじょうを狙わず、再現性を考えて、獲得系コンテンツから実施しましょう」と提案した。
コンテンツマーケティングとは何か? を問い、因数分解をしてコンテンツマーケティングの本質を明らかにしていった實川氏と福田氏。次のレポートでは、両社の事例を交えた実践方法を紹介する。