コンテンツマーケティングを見直す
ならば、どのようなコンテンツ設計や発信が、ブランド資産につながり、成果を出すのだろうか。
實川氏は、「コンテンツマーケティングが取るべきKPI/KGIについて、思い切って考え直していきましょう」と提案。そして、ブランド・エクイティの構成要素別に、ブランド資産へつながるコンテンツの良い例/NG例を紹介した。

まずブランド認知には、広く印象に残り、頻度高く顧客と接点が持てるコンテンツが必要だ。続いて、代替品と比べたときに顧客が想起する品質を意味する知覚品質を高めるには、ユーザーの期待を上回る質の高いコンテンツを作らなければならない。さらにブランドロイヤリティは、会員向けや既存ユーザー向けコンテンツなど、LTVを高めるコンテンツが有効。
ブランド連想には、一貫したテーマに沿った情報を。そして、他の所有権のあるブランド資産には、ユーザーコミュニティや強い自社ドメイン、SNSのインフルエンス力など、競合が真似しづらく、コモディティ化も難しいコンテンツが効く。
一方、クオリティや世界観、テーマがバラバラで、サービスと乖離が起きてしまうコンテンツはNGだ。このようなコンテンツは、どれだけ予算や手間をかけても、ブランド資産につながらない。さらに實川氏は、他社ドメインのサービスを使う場合の注意点を挙げた。
「SNSや他社ドメインのサービスは、拡散性があり、インフルエンス力も高く、活用するメリットはあります。一方で、配信アルゴリズムの変化やサービス運用の方針に影響を受ける可能性も捨てきれません。自社のドメイン内で資産となるコンテンツを作ることが重要です」(實川氏)
愛をもって、自社サービスを語っているか?
あわせて福田氏は、「ブランド連想を目的としたコンテンツには、しっかりと自社サービスを盛り込むべき」と指摘。たとえ、検索ボリュームが多いビッグキーワードで検索上位に来ても、サービス内容が薄いコンテンツでは意味はない。
現在、「キャッシュレス」で検索すると、三井住友カードのコンテンツ「キャッシュレスとは? 知っておきたいキャッシュレス決済の基礎知識」が上位に掲載される。丁寧な解説記事に留まらず、三井住友カードが想起される内容だ。
福田氏は、「マーケティング活動の一環なのに、企業メリットが盛り込まれていないコンテンツが多いのではないか?」と疑問視する。重ねて實川氏も、「コンテンツマーケティングの担当者は、こだわりとビジネスのバランスを保つべき」と主張。顧客に有効な情報発信や何を求めているか?の視点は重要だが、企業活動を忘れてはならない。コンテンツマーケティングの成果や継続には、このバランス感覚が必要だ。
「コンテンツだ、メディアだと、特別視は必要ありません。自社のマーケティング活動ですから、自社の製品を愛し、堂々とコンテンツにあわせて語りましょう。それができない企業は、コンテンツマーケティングをやらないほうがいいです」(福田氏)
コロナ禍の影響にあり、マーケティング予算が抑えられてしまう企業もあるだろう。ならば、「広告費がかからないコンテンツマーケティングはどうだろうか?」と考えるマーケターがいるかもしれない。だが福田氏らは、「取りあえずで制作したコンテンツは、ブランド資産にならない。目的と熱意をもって取り組むべき」と、警鐘を鳴らす。