SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

海外コンテンツマーケティング探訪~業界横断で使える「型」を手に入れる

金融業界に学ぶ、ライフステージに寄り添うコンテンツ【内容・配信方法の工夫】

社会人向け:忙しい生活の中に「情報」「親密さ」を届ける

 筆者は熊本在住で、毎朝、ポッドキャストを聴きながら車で通勤しています。選ぶ番組は、コンテンツマーケティング、英語学習など様々ですが、完全に習慣化しており、頭を仕事モードに切り替えるのに役立っています。

 近年、ラジオコンテンツへの注目は高まりつつあります。米国のEdison ResearchとTriton Digitalの調査によると、米国の12歳以上でポッドキャストを聞いたことがあると答えた人の割合は、2006年が11%なのに対し、2019年には51%と増加しています。また、英国のBBCが同年に発表した調査では、94%の人が何かしらの作業をしながらポッドキャストを聴いており、ブランドへのエンゲージメントについて高い効果を発揮するとされています。

 同調査でも指摘されていることですが、ラジオコンテンツの魅力は「ながら聴き」ができることと、「親密性」にあります。映像とは違い、そのコンテンツ一つに縛られることはありません。また、リスナーとのメールやお便りのやり取りができるなど、プライベート空間を作り出すこともできます。実際に国内でもポッドキャストのチャンネルを持つ企業があり、実際にリスナーとやり取りを行っています。そして、ここがポイントですが、自社商品についての宣伝文句は一切ありません。

 このようなラジオコンテンツの特性は、忙しい社会人にぴったりだといえます。海外の金融業界では積極的にラジオコンテンツを配信しており、金融に関する有益な情報や経済状況についての解説を提供しています。

 中でも証券などを扱う英国の「Barclays」は、豊富なポッドキャストのチャンネルを用意しています。投資家向けに金融市場に影響を与えるニュースを解説するものや、世界の様々な課題に対して企業がどのように対応できるか説明するものがあります。

 一般のサラリーマンにとっては「The Flip Side」が役に立つでしょう。世界経済についてテーマを決め、異なった意見を持つアナリストが議論する構成になっています。

豊富なチャンネルを用意しているBarclays(ホームページのポッドキャストコーナーより)
豊富なチャンネルを用意している
(Barclaysホームページのポッドキャストコーナーより)

 また、より対象を狭めたラジオコンテンツを配信している例もあります。それが、米国の「Bank of America」の「The Heartbeat of Main Street」です。このコンテンツは、起業家や中小企業の経営者の成功体験を語るという内容です。同じ立場にある人や、これから起業を考えている人には励みになるコンテンツといえるでしょう。Bank of Americaにとっては、これらの人々を応援する立場であることを、コンテンツを通じて打ち出すことにもつながります。

Bank of Americaのラジオコンテンツ(Forbes Booksより)
Bank of Americaのラジオコンテンツ(Forbes Booksより)

 国内の金融業界でもラジオコンテンツを活用する動きが広がるのか。今後注目すべき点です。

子育て世代:生活で発生する悩みにアドバイスを送る

 社会人になり仕事も軌道に乗り、やがて家族を持ったとします。そうすると、自分のことだけではなく、家族の人生についても考えていくことになります。いざというときのために、保険に入ることも考えるかもしれません。

 生命保険や自動車保険など各種保険を扱う米国の「Progressive」は、そんな人のために、保険の基礎知識について解説する記事をホームページやオウンドメディアで展開しています。

 ホームページでは「PROGRESSIVE ANSWERS」と題するページを設け、保険に関するあらゆる基礎知識について解説しています。こちらのページも素晴らしいのですが、今回注目するのは同社が運営しているオウンドメディア「LIFE LANES」です。ここでは日常生活に役立つ情報をまとめた記事が用意されており、記事は「On the Road(路上)」「Household(家庭)」「Adventure(冒険)」「Turning Points(人生の転機)」とカテゴリー分けされています。

記事は4つのカテゴリーに分けられている(「LIFE LANES」より)
記事は4つのカテゴリーに分けられている(「LIFE LANES」より)

 各カテゴリーには保険に限らず、生活において起こりがちな悩みや問題についての解説記事が用意されており、たとえば「Household」ならば「How to be a good neighbor while renting(賃貸でお隣と良い関係を築くには)」「How to bring color to a room(部屋にどう色を持ち込むか)」などがあります。

 お隣との関係について書かれた記事では、最後に同社の賃貸向け保険のページに飛ぶリンクが設置されており、導線がしっかりと設計されています。もちろん保険に関する記事も用意されており、たとえば「Turning Points」にカテゴライズされている「How to choose a life insurance beneficiary(生命保険の受取人はどう選ぶ)」の記事がそれにあたります。

記事の最後にはProgressiveが扱う保険のリンクが設置されている(「LIFE LANES」より)
記事の最後にはProgressiveが扱う保険のリンクが設置されている
(「LIFE LANES」より)

 保険について考えるということは、その人は生活面で何かしらの不安や悩みを抱えているものです。家族のことについて考えるのであれば、一人だけで考えるわけにもいきません。カテゴリーごとに整理され、家族と一緒に読み進めていけるようなコンテンツは、安心感を与えてくれるはずです

次のページ
シニア世代:未知のものへのハードルを一緒に乗り越える

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
海外コンテンツマーケティング探訪~業界横断で使える「型」を手に入れる連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

山田 太一(ヤマダ タイチ)

エディター、コンテンツマーケティングコンサルタント。産経新聞記者、人材採用広告会社の営業を経て、クマベイスに入社。クライアントワークにあたるとともに、コンテンツマーケティングやコンテンツ戦略の海外事例を研究する。熊本県出身。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2020/10/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/34490

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング