マスに広がるのを阻む、陥りがちな3つの要素
「社会を良くするもの」として、マーケティング活動を企画し発信をしていくとき、“企画がマスに広がる”のを阻む3つの要素が存在する。
1.その企画で解決できる社会課題が、「自分の生活に身近でない」ものが中心である2.メッセージがマイナスの気持ちから入るものである
3.その企画に参加することで、「あの人はいい人」と心理的な距離を持たれる
たとえば「おにぎりアクション」が支援するのは、日本から遠く離れたアフリカに住む、お腹を空かせた子どもたちである。この状況に手を打たなければいけない、何とかしたいという想いは、恐らく多くの人が持つ共通の想いだ。しかし、自分と遠い存在の課題に対し、日常生活の中で日々行動できる人は、ほんのごくわずかだ。行動喚起できたとしても、それを日々継続してもらったり、近くの人に伝播してもらったりするのは非常に難しい。
2つ目の“マイナスな気持ち”というのは、これは由々しき事態だ、何とかしなければ、という気持ちを指しており、決して悪い感情ではなく、そのような気持ちになるからこそ課題を解決するパワーが生まれる。しかしその気持ちを維持するには、大きなエネルギーを使うのもまた事実だ。
そして3つ目は日本の特徴的な部分でもあるのだが、ソーシャルな取り組みに参加する人は、素晴らしすぎる人だと、人から心の距離を置かれてしまうという課題もはらんでいる。こういった3つの要素により、ソーシャルな取り組みはなかなかマスに伝播するのが難しい。
そこで、「ポジティブへの転換」が重要になる。おにぎりアクションでは、顧客にとってアフリカの子どもたちという受益者、私たちが最終的に食を届けたい受益者が遠いのであれば、ではなにかそれをポジティブに変えるようなワンアクション(=おにぎりアクション)を入れるべく設計している。企画のネーミングも、参加者が「素晴らしすぎる人」という認識をされないよう、“チャリティー活動”“ドネーション”等の言葉ではなく、“アクション”という言葉を選び、楽しくライトな印象を持たせている。
これらの結果として、予算ゼロからスタートした施策でありながら、デジタル上で広く伝播し、日常生活の中で繰り返し行動喚起がされ、累計230万人が参加する企画へと成長を遂げたのである。
今回は、「予算ゼロでもマスに届く、ソーシャル・マーケティング成功の法則」として、「コンセプトメイキング」と「メッセージング3原則」について解説した。次回は、SNS上での「拡散の仕掛け」について紹介する。
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