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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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編集長インタビュー

ユニ・チャーム「#がんばれシンクロフィット」が実践する、ファンの熱量をマーケティングに結びつける方法

 昨今、大きくなりつつあるダイバーシティやSDGsなどの取り組み。その一方で、「社会にいいことをしても売り上げにつながるの?」という声も聞こえてくる。そんな中、これまでタブー視されてきた話題について、SNSを通じて当事者が声を上げ、それがブランドや商品の認知拡大、売り上げにつながるケースが出てきている。ユニ・チャームの展開するサニタリー用品「ソフィ シンクロフィット」は、その商品特性からマス広告では思うような反響が得られなかったものの、Twitter上のロイヤルユーザーの声から商品の魅力が広がり、新しいユーザーを生み出す好循環が生まれている。今回は、「ソフィ シンクロフィット」を展開するユニ・チャームのマーケティング担当者と、SNSのうねりをもとに「#がんばれシンクロフィット」の取り組みを行うランドリーボックスの西本美沙氏に話を聞いた。

15秒では伝わらない商材をどうマーケティングするか

――2005年に発売された「ソフィ シンクロフィット」(以下、シンクロフィット)は、一般的なサニタリー製品で実施するマスマーケティングの王道施策が通用しなかったそうですね。その理由についてどのように分析していますか。

ユニ・チャーム:商品特性を15秒で伝えきるのが難しかったからだと思います。ナプキンでもタンポンでもなく、製品独自の使い方や特性を、15秒のテレビCMでは伝えきることができないと感じていました。

 その後、2~3回パッケージを変更しましたが、なかなか商品パッケージの狭いスペースでは使い方やメリットをしっかり伝えることができず、ドラッグストアの店頭にワゴンで大量に配荷していただいても売り切れないことがありました。

 当時は今と違って、一般の方がSNSで発信する習慣自体がそれほどありませんでした。女性にとって口に出しにくい生理に関する内容ですと、なおさらです。口コミも起こりにくい状況でした。

西本:ご自身が営業だったとき、様々な工夫をして店頭で売っていたんですよね。シンクロフィットを売るために孤軍奮闘していたそうですが、そこにも今のヒントになるようなことがあったとか。

ユニ・チャーム:僕はこの商品が、生理に悩む女性を助ける画期的なものだと確信していたので、一人でも多くの人にこの商品の魅力を伝えたかったのです。そこでドラッグストアの方々にもご協力いただき、女性スタッフの使用感をもとにPOPを作ったり、違う商品の什器を改造してシンクロフィットを積み上げたりしていました。リアルな店員さんの声による反響は大きかったです。

――従来、シンクロフィットの販路はどのようなチャネルがメインだったでしょうか。

ユニ・チャーム:他の商材と比べて、ECでの売り上げが高いのが特徴です。店頭で見つからないため、ECサイトで定期便購入している、まとめ買いをしているというユーザーの方が多数いらっしゃいます。

西本:私も店頭にないから置いて欲しい、大容量タイプが欲しいというリアルな声をよく聞いていました。

ユニ・チャーム株式会社 シンクロフィット マーケティング担当者
ユニ・チャーム株式会社 シンクロフィット マーケティング担当者

ロイヤルユーザーのたった1つのツイートで、売り上げが2倍に

――2018年に、ロイヤルユーザーの方が発信した1つのツイートをきっかけに、こうした状況が劇的に変わったそうですね。

ユニ・チャーム:2018年7月にシンクロフィットのファンだという方が、イラストや詳しい説明をつけて、商品の魅力をツイートしてくださったんです。

 「寝ているときや動き回るときにつたい漏れが心配な人におすすめ」「股に挟むだけで経血を吸収してくれる」「手のひらサイズで、そのままトイレに流せる」といった訴求ポイントを4枚の画像にまとめて、使用方法の解説までしてくれていました。

 まさに私たちが推して欲しいポイントをしっかり押さえた内容で、このツイートが6万いいね、3.2万リツイートを超え、大きな話題となりました。

――このツイートは、社内ですぐ知るところとなったのですか?

ユニ・チャーム:ツイートの直後から、デジタル関連の部署から「シンクロフィットのWebサイトに急にアクセスが増えている」という連絡がきたり、「なんだかSNSで盛り上がっているみたいなんだけど」というメールが社内からよせられたりと、社内がざわつき始めました。そして、ツイートの広がりとともに1週間で商品が欠品。売り上げは2倍となりました

――それは凄まじい変化ですね。SNSで話題化したからといって、なかなか売上に直結しないという声はよく聞きますが、なぜシンクロフィットは売り上げにつなげることができたのでしょうか。

ユニ・チャーム:ツイート以前の認知率が数%だったので、話題になったときの上がり幅がそもそも大きい商品だったことも要因の一つだったと思います。ツイートの内容も、商品に対する愛情や熱量があふれ、メーカーによる宣伝色がなかったことも良かったのだと思います。

西本:当時は「#MeToo運動」を経て、女性特有の問題を「自分の意見」として社会に発信していいんだという空気感ができはじめた頃だと思います。生理を取り巻くに環境に大きな変化が起きたタイミングとも合致したのではないでしょうか。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/11/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/34822

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