メーカーは介入せず、ユーザーの盛り上がりを見守る
――ユーザーの声をマーケティングに活用する上で、多くの企業が悩みを抱えています。「発信は嬉しいけれど、意図しない発信は嫌だ」「バズりたいけれど、炎上したくない」というのが各社の本音です。こうしたUGC活用の難しさについて、何かお感じになることはありますか。
ユニ・チャーム:確かにそういう危険性や悩みについては共感するところです。しかしシンクロフィットについては、ありがたいことに9割9分が大絶賛の声なのです。それだけ盛り上がっているのであれば、メーカーが介入せず、ユーザーのリアルな声をお届けしたほうがいい。
この商品に限っては、ユーザーの盛り上がりにメーカー側が割り込まず、ユーザーの声をそのままお伝えすることを心がけています。
実はこのツイートがバズった後、感謝の気持ちをこめてサンプリング企画を行ったことがありました。ところがROIは適切だったものの、思ったほど話題にならなかった。このとき、この商品に関してはユーザーコミュニティを大切にしよう、メーカー側からの発信や押しつけはやめようと決めました。
ユーザーと一緒に、商品を取り巻く社会環境から変えていく
――ユニ・チャームでは、昨年から「#NoBagForMe」というプロジェクトも始めています。ユーザーを巻き込んで、商品を取り巻く社会環境やユーザーの考え方ごと変えていこうと考えた背景には、どのようなきっかけがありましたか。
ユニ・チャーム:「#NoBagForMe」は、生理や生理用品について気兼ねなく話せる世の中を実現したいという考えのもと、スタートさせたプロジェクトです。
生理用品について社内でディスカッションしたとき、「日本にはこれだけ質の高い生理用品がたくさん生まれているのに、漏れてしまった、かぶれてしまったという声が絶えない」という話になりました。事実、ユーザーからも自分に合った生理用品が選べないという声が多数寄せられていたのです。
確かに、友だち同士で「今どの生理用品使っている?」という会話をなかなかすることがないですし、社外で「生理用品ってどうやって選んでる?」と聞いても、「母が使っていたもの」「店頭で目についたもの」という声が多く、「そういえば何を使っていたっけ」という反応も多数ありました。
そこで、生理について話をする機会を作ろうと、「#NoBagForMe」のプロジェクトを立ち上げました。よく考えてみると、日本では店頭で生理用品を購入すると、透過しない黒いビニール袋や紙袋に入れられることが多いですよね。こうしたことは、海外ではありません。
生理用品ブランドを展開するハヤカワ五味さんを始めとする5人のインフルエンサーがプロジェクトメンバーとして参画。生理用品について選択肢を増やす様々な取り組みを行いました。2020年は2年目として、男性学の田中俊之先生や恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田隆之さんら男性メンバーにも加わっていただいています。
こうした取り組みを行った結果、20代を中心に大きな反響があり、タンポンのインターネット経由のトライアルは3倍に増えました。また、企業から生理研修をして欲しいという依頼も寄せられ、4社に対して実際に研修を実施しました。そのうち1社は生理休暇の導入に至っています。
ユーザーを取り巻く環境を変え、ユーザーの悩みを一緒に解決する姿勢を示すことで、商品特有のできごとを「世の中ごと」に変えていけるんだという手応えがありました。
