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LGBTs、多様な性自認を尊重したマーケティング調査設計

調査設計と結果

 本調査は、全国のインテージネットリサーチモニターに対して実施、スクリーニングの回収は18万3,345名、その中でLGBTs層の出現率は8.3%であった。シスジェンダーストレート層は、従来の性別聴取はしないため、割付は登録情報ベースで行い、性年代別15歳から69歳の10代きざみで均等割り付けし、各セル100名を回収目標とした。

 ここで、調査目的の検証からは外れるが、非常に興味深い発見があったため紹介したい。調査内で「普段のアンケートで性別を答えるとき女性か男性のどちらで回答しているか」をLGBTs層に聞いた。全体でほぼ9割が出生時の性別で回答している。一方で、レズビアン・ゲイの人については、2割程度が逆の性別を回答していた(図表2)。

図表2 普段のアンケートで性別を答えるとき女性か男性のどちらで回答しているか
図表2 普段のアンケートで性別を答えるとき女性か男性のどちらで回答しているか(タップで画像拡大)

 シスジェンダーであるレズビアン・ゲイの人が出生時の性別とは異なる回答をする理由としては、彼らのパートナーに対する自身の役割が影響していると考えられる。このことから、現在の女性/男性の2つの選択肢のみでは、実態を正確に把握できない可能性も考慮すべきであろう。

 今回評価した性別聴取案は、図表3に示した4つの案である。

図表3 調査で示した性別の聞き方4案
図表3 調査で示した性別の聞き方4案(タップで画像拡大)

 P案は、男性/女性の2つのみの選択肢、Q案は、P案に「その他」を加えたもの、R案は、出生時の性別と現在の性別をたずねたもの、S案は性的指向を含めた複数選択可能な選択肢である。

 これらの選択肢について、「わかりやすさ」「自分の性別を的確に表せているか」「セクシュアルマイノリティ(LGBT等)に配慮された選択肢だと思うか」を5段階(そう思う、ややそう思う、どちらともいえない、あまりそう思わない、そう思わない)のシングルアンサーで評価した後で、総合評価(とてもよい、よい、どちらともいえない、よくない、まったくよくない)、最後には、1〜4位までの順位をつけてもらう相対評価も行った。ここからは各指標に対する調査結果を解説していく。結果の詳細は紙幅の都合上、総合評価についてのみ図表4に掲載する。

図表4 各選択肢案に対する総合評価
図表4 各選択肢案に対する総合評価(タップで画像拡大)

 「わかりやすい」「自分の性別を的確に表せていると思う」、この2つの指標については、LGBTs層、シスジェンダーストレート層ともに、「そう思う」と「ややそう思う」を足しあげた結果は、R案が最も高かった。一方で、「そう思う」単体の割合ではP案が最も高かった。LGBTs層において、ジェンダーアイデンティティ(性自認)別で見た場合、いずれの指標もP案はシスジェンダーに比べ、トランスジェンダーで「そう思う」および「そう思う+ややそう思う」のスコアは低かった。一方で、R案に対しては、シスジェンダーに比べ、トランスジェンダーにおいて「そう思う」および「そう思う+ややそう思う」のスコアが高かった。また、「セクシュアルマイノリティ(LGBT等)に配慮された選択肢だと思うか」という指標においては「そう思う+ややそう思う」を見ると、LGBTs層でS案、シスジェンダーストレート層でR案が最も高かった。

 各選択肢案に対する自由回答を見ると、LGBTs層においてQ案で「わかりやすい」「選択しやすい」の意見が多く見られた一方で、定量的に支持を集めたR案では「LGBTsに配慮されている」という意見があるものの、「わかりづらい」「面倒」と感じる声も見られる。S案では選択肢が複数あることで選びやすさを感じる人と「細かすぎる」や「複雑」と見る人に分かれた。シスジェンダーストレート層においては、Q案とR案に対し、「わかりやすい」「LGBTsに配慮されていてよい」という意見が多く見られたが、Q案に対して、「“その他”は排他的、雑、失礼である」という意見もあった。P案に対しては「2つしか選択肢がないのは配慮が足りない」という意見や、Q案のように「その他」「答えたくない」といった選択肢を追加するべきという声が多く上がっていた。S案は、配慮されていると感じる一方で、回答しにくいという意見が数多く見られ、「性的指向まで踏み込む必要性が感じられない」という意見もあった。最終的な総合評価は、いずれの層もR案の評価が高い結果となった。

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配慮とわかりやすさの両立が必要

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この記事の著者

小林 薫(コバヤシ カオル)

外資系マーケティングリサーチ会社等を経て、2015年株式会社インテージに入社。
現在は表情解析を使ったテレビコマーシャルのクリエイティブ評価など各種アドホックリサーチソリューションの担当をしながら、新しいマーケティングリサーチソリューションの企画・開発に携わっている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/11/25 15:00 https://markezine.jp/article/detail/34870

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