クリエイティブに求められる長さの視点
――hakuhodo DXDでは、西濱さんをはじめ多くのテクニカルディレクターの方が在籍していると聞いています。システムエンジニアリングとクリエイティブという双方の知見を持つテクニカルディレクターが企画に入ることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
一番大きなメリットは、クリエイティブに「長さ」という視点が加わるということです。これまでの広告クリエイティブは、どれだけの人に届けるかという「広さ」と、心にどれだけ刺さるものを作れるかという「深さ」、大きくこの2つの視点で考えられてきました。
テクニカルディレクターは、そこにシステム的な設計・運用思想を加えることで、どこまで使い続けられ、受け入れ続けられるのかという「長さ」の視点で、より良いものにしていくというアップデートや成長を促していきます。
先ほどサービスデザインやアプリ開発にも関わっているとお話ししましたが、それらは一過性のものではなく長く使われることが前提にあるため、クリエイティブに長さの視点が求められるのです。

DXになぜクリエイティブが必要?
――クリエイティブに長さの視点を持つというのは新しい発見でした。しかしながら、DXとクリエイティブというのは、一見するとかけ離れたところにあるイメージだったのですが、なぜDXにクリエイティブの力が求められるのでしょうか。
DXにも様々な種類があって、機械やコンピューターが自動化によって効率化するものもあれば、人が触れて使うことをデータ化し成果を最大化するものもあります。そのときに、人が触る=生活者が触るということは、そこに感情があります。
たとえば、バックオフィスの効率化を目指すシステムがあったとして、それを使うと確かにデータは整理されるのですが、とにかく使いにくいとします。それだと、導入した会社は管理がしやすくなるかもしれませんが、利用者には精神的なハードルが残るので、本当の効率化とは呼べないのではないかと思います。本来解決するべきポイントがシステム設計の段階でごそっと落ちてしまうと、せっかくのシステム導入のチャンスを活かせないのです。
そこに、博報堂グループが培ってきた生活者発想や、人の心を動かすクリエイティビティを活かすことで、体験や感情といった人らしさを大事にしたシステムやサービスの構築をお手伝いできるのではないかと考えています。