特需で「キャッシュ赤字」を免れたZoomやNetflixの今後
外出自粛傾向によるオンライン&リモート会議や、サブスク・ユーザーの増加に注目が集まるが、これらは「単なる特需効果」に過ぎない。たとえばZoomの今年上半期での使用量増加の多くは無料版だ。今後長期的に有料LTV転換に至るまで、キャパ拡大への投資などのサポート費用が増大する。
Netflixも営業キャッシュフローが2019年末までは年間3,000億円近い赤字が「拡大」継続していたが、この特需のおかげで2020年の上半期は出血が「初めて」止まった。これもユーザー数増加に加えて、撮影コストが遅延した特需のおかげである。増えた収入と使ったコストや将来価値で割り算をすればコンテンツの単価が逓減しているのはうっすらと感じられる。しかも本番はこれからである。
通信インフラは、映像コンテンツ配信より「重い」価値
日本市場においての次なるヒントとしてDocomoやKDDIのような通信インフラ企業は、今後とも「データ」のパイプ役として重要な位置を占めるのは誰しもが理解できるところ。ただし、彼らの事業領域として「広告ターゲティング」「編集ビデオコンテンツ」等の旧来のマーケティングの「金貨」や「種」だと思われていた行為は、徐々に「負債」を越えて「自社の金儲けとしてはご法度」へシフトしつつある。
今後技術が進めば進むほど、パイプとなる通信や、心臓となるプロセッサー(半導体)や、そしてエネルギーとなる電力などのインフラ部門が運ぶ「重い」価値データ(例:個人の生命や金融資産に直結する様なデータ)は重要度(必要度)が高くなるのは確実だ。VerizonやAT&T(さらにはNTT+Docomo)の動きはそれに歩調を合わせ、「襟を正し、本業に徹する」姿を見せている。
日本の企業で話題の「DX」を掲げるシフトブームは、その先の「飴玉」となる事業の創出が見えないままだ。VerizonやAT&Tが見せているシフトは、人々につながるパイプ配信事業が持つ価値が「軽い」推量データより、別の何か「重い」責任を持つ価値へ移行中の「シグナル」として注目しておこう。