テスト中の「ARショッピング」にも注目
ショッピング機能の活用もInstagram利用者に浸透している。日本の利用者は、他国と比べてショッピングタグから商品詳細を観る割合が3倍にものぼる。
これほど購買意欲の高い利用者がいることを踏まえ、現在ARショッピング機能をテストしている。たとえば、インテリアグッズなどを購入する際に、実寸大の商品をカメラ越しに自分の部屋などでシミュレーションでき、気に入ればすぐECサイトで購入できるといった活用法等が考えられている。
ニューノーマル時代の生活様式に合わせながら「好き」「欲しい」を加速させ、購買につなげる機能をこれからも実装予定だ。
最後に味澤氏は、Instagramを有効活用している例として無印良品(@muji_global)を紹介した。無印良品はプロフィール来訪者のファーストビューに入るストーリーズハイライトを有効活用し、一押しの商品などを訴求。また、ショッピング投稿で様々な商品をビジュアルで伝えて購買の導線をつくり、IGTVで商品のより詳しいストーリーや、スタッフが身近に感じられるコンテンツで顧客とのエンゲージメントを深めている。Instagramでショッピング投稿をすると販売数が伸びるため、事前に在庫を補充してから投稿する配慮も行っているという。
コロナ禍のビジネスを支える3つの新機能
続いてInstagram製品部門責任者のヴィシャル・シャー氏によるキーノートでは、コロナ禍で開発された新機能やテスト中の機能について明かされた。
「利用者は自分の興味関心とつながるためにInstagramを利用しているため、Instagram上には大好きなクリエイターや製品、ブランドを応援したいという活気あるコミュニティが存在しています 。大好きなものに囲まれ、発見から購入までの行動により意欲的になっている生活者にリーチすることで、ビジネスはより大きな成果を上げることができるのです」(シャー氏)
コロナ禍で人類は物理的にソーシャルディスタンスを保たなければならなくなり、ソーシャルメディアがコミュニティや人間関係をつなぎ止めることになった。こうした状況で、Instagramはどのように人々をつなげ、ビジネスを加速させたのだろう。
シャー氏はそのひとつとして、既存機能の役割が大きく変わったことを挙げる。たとえば「Instagramライブ」は、離れて直接会えない人々がリアルタイムでつながるための貴重な手段となった。
日本では、「#アットホームWith」という企画で3ヵ月間、月曜から金曜まで毎日Instagramライブを配信するシリーズを公開。このコンテンツは、藤原史織さんやゆりやんレトリィバァさんらクリエイターが視聴者の部屋にやってくるというコンセプトでライブを実施したもの。ゆりやんレトリィバァさんが学生時代の友人と行ったライブ配信では「特別なことをするのではなく、2人がリラックスした様子で話すInstagramライブを行い、それをコンテンツにする」という使い方で700万超のPVを獲得した。
さらに、坂本美雨さんをはじめとするアーティストも、コロナ禍をきかっけにInstagramで定期的にライブ配信を行い、ファンとの新たなつながりを生み出した。
もうひとつ、Instagramがコロナ禍で力を入れたのが、中小企業をサポートすることだ。
「中小ビジネスのサポートは、常に私たちのコアとして重視しています。日本では『TableCheck』などのパートナー企業と連携し、『料理を注文』といったスタンプを新たに導入。利用者がお気に入りの飲食店にデリバリーやピックアップを注文しやすくする工夫を行いました」(シャー氏)
グローバルでの取り組みに加え、独自の開発チームがいる日本でも様々な機能をリリースしたといい 、代表的な3つの機能を紹介した。
(1)QRコードを有効活用
利用者がビジネスのアカウントをフォローしやすくするため、QRコード生成機能を実装。2019年12月に日本で先行公開し、その後グローバルに展開した。
(2)イベントの告知・リマインド
ビジネスが、Instagramライブや店舗イベントなどの情報をフィード投稿にタグ付できる機能。利用者は タップひとつでリマインド設定できる。イベントの開始15分前に、通知がくる仕組みだ。
(3)旬の話題をリスト表示
トレンド情報を好む日本の利用者向けに開発された機能で、国内で利用が伸びているハッシュタグ10個をリスト表示する。他のソーシャルメディアでも、いわゆる「トレンド入り」した話題について語り合うことが好きな日本の利用者の特性を捉えた新機能だと言える。
シャー氏は「大切な人や大好きなことと利用者がつながるために、利用者のフィードバックから学び、 様々な機能を実装することが私たちの核となっています」と、機能実装の背景について話した。