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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

マーケティングは、経営と直結するもの WHOとWHAT不在の日本のマーケティングを変えていく

目的と仮説なき調査は無意味「戦略調査」の必要性

――過去の記事や講演でも、日本企業は手法論に走りがちで「HOW」偏重になっており、「WHO・WHAT」が不在だと指摘されています。他に日本企業はどういった部分に問題を抱えていて、それがどう変われば成果が上がるとお考えですか?

 大きく、調査、広告宣伝のKPI、そして経営における「勝ちパターン」の有無という3つのポイントがあると思います。このうち調査と広告宣伝については、前述の協業の理由にも関係しています。協業によってこれら2つの課題を解決できれば、クライアントの事業に貢献できる余地が大きいからです。

 順を追って3つを説明すると、まず、目的と仮説がない調査がとても多いと思います。皆さん、顧客を知るために調査をすると言われますが、話を聞くとほとんどの場合で、アクションにつながる戦略的な調査は行われていません。目的と仮説がないと、調査の後にアクションができず、顧客のことがなんとなくわかった、という漠然とした状態で終わってしまいます。

 科学者が、仮説もなくただAとBを混ぜる実験をしないのと同じで、マーケティングに活かすために調査をするなら、必ず具体的な目的と仮説が必要です。

 仮説が明確で、調査後のアクションまで見据えた調査を「戦略調査」と呼んでいます。P&Gはこの点に非常に厳しく、調査部門に調査の依頼をする際に少しでも甘いところがあると、「目的は何で、結果を君はどう活かすつもりなのか」と詰め寄られました。仮説を見据えて、調査結果を基にどんなアクションをするのかと考える習慣をつけていくことは、マーケティングの成果を高める第一歩になると思います。

「話題になるものを」と広告会社に依頼する誤り

――戦略的な調査ができないと、先へつながらないわけですね。次に、2つ目の広告宣伝のKPIについてうかがえますか?

 マーケティングを担う部門が、経営に直結するKPIを持つことが必要だと思います。冒頭の、広告宣伝部が何をしているのかという話にもつながりますが、最終的には顧客の購買によって利益を上げることが事業の目標なので、広告を投下して認知だけで終わってしまってはむしろマイナスです。認知やWebのトラフィックなどを指標にするとしても、あくまでその先の売上や利益向上をKPIとしながら、そこにつながる数字として役立てるのが妥当だと思います。

 併せて、広告宣伝の機能を持つ部門では広告会社との取引が多いと思いますが、依頼の仕方が雑だと常々感じています。丸投げ、と言ってもいい。本来なら、事業会社がターゲット顧客とその心理を把握し、心理と行動を変える戦略と、そのための提供価値とコンセプトを広告会社に提示すべきですよね。加えて、広告会社の施策やクリエイティブを判断する基準を示して指示を出し、挙がってきた施策やクリエイティブを正しく評価しないといけない。

 なぜ正しく評価できるかというと、ターゲット顧客を一番よく知っているのは事業会社だから。……そうあるべきですが、「なんか良さそうなものを」「話題になって認知が獲れるものを」という依頼が、多く見られます。これが本質的なマーケティングとは程遠いことだと、気づいていただきたいと思います。

――では、3つ目の、経営における「勝ちパターン」の有無とは?

 文字通り、拠り所となる確たる考え方やフレームワークがないために、労力や費用の投資対効果を最大限に得られていない状況があります。顧客に真摯に向き合っているのに、成功する確率が高い方法を知らないがために、労力や費用が無駄になってしまう。そうした状況は、本当にもったいないと感じていました。

 前半の話に通じますが、プロダクトアウトでうまくいく時代が長かった日本企業は、そのビジネスに組織を最適化してきた歴史がありますし、考え方もスキルセットもいきなり変えるのは難しいとは思います。ただ、私が強く確信しているのは、マーケティングもクリエイティブも勘や才能やセンスではなく、顧客を正しく見抜く「方法」で差がつくということです。この点も、意識することを第一歩として、拠り所となる方法論を取り入れると成果が変わってくると思います。

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WHO・WHATを行き来する思考を身に着けるには

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2020/12/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/35095

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