習慣化は「PACフレーム」である
中川氏は、顧客の習慣化をテーマにした著作『カイタイ新書 ─何度も「買いたい」仕組みのつくり方─』(秀和システム)で、「マーケティングは、何度も買いたくなる仕組み作りであり、習慣化が必要」と提唱。その習慣化を、Prediction(兆しを読む)、Addiction(新習慣を作る)、Conversation(会話を広げる)の3ステップで考えるPACフレームを考案した。
さらに、今回はマーケティングと番組制作の共通点を探るべく、顧客の習慣化を5つの法則を切り口に切り込んでいった。それが、(1)客数と接触時間、(2)トレンドは振り子、(3)クセになる無駄なもの、(4)顧客は絞っても排他しない、(5)ベタであることを恐れない、だ。それぞれについて説明する。
まず、「客数と接触時間」とは、既存顧客へ施策とマーケティング予算をシフトし、LTVを伸ばす話だ。LTVを伸ばす上で、習慣化は不可欠で、ポジティブとネガティブ、本能的と理性的の四象限を作成し、習慣を、欲求を満たす「快楽」、実感をともなう「成長」、心地悪い状況を改善する「不快解消」、手間とお金をかけても解決したい「不満解消」の4つに分類する。続いて、2つ目の法則「トレンドは振り子」。トレンドは、相反する感情や事象の間を、振り子のように行ったり来たりすることを意味する。「具体的なトレンドの予測は難しいが、大きく影響を受けやすいのは社会情勢。法改正や大統領選挙などの世の中の動きは見てほしい」と中川氏。
歯磨きを習慣化した「触媒」はミント
3つ目の法則「クセになる無駄なもの」は、歯磨きの習慣で考えるとわかりやすい。習慣は、きっかけ・ルーチン・報酬の要素が必要だが、それ以外に歯磨きの場合は本来なくても成り立つ「歯みがき粉のミント」が、習慣のサイクルを回す刺激となっている。この刺激を、中川氏は「触媒」と名付けた。
触媒には5つの種類があり、快楽と不快解消の習慣にはミント型と「ざくざく」「パリパリ」などの五感を刺激するコンフォート型が合う。成長の習慣には、ランニングアプリなど成果の可視化されるダム型。そして不満解消の習慣には、ルーチン行動のセレモニー型や、電子決済の効果音といったアナログ型の触媒が当てはまる。
4、5つ目の法則「顧客は絞っても排除しない」「ベタであることを恐れない」は、事業をスケールするにあたり重要だ。顧客層やエリアなどのターゲティングを絞りすぎると、ニッチ化しやすい。その先を見据えて、「ベタであること」を恐れてはならないのだ。パッケージをおしゃれにしすぎない、ブランドを尖らせすぎないなどが挙げられた。