バイアスを逆手に取る方法
しかし、マーケターにとって、AIモデルの訓練用に使うデータに多少のバイアスがかかっていることは悪いことではなく逆に貴重なことといえます。私たちは、バイアスという言葉を否定的な意味で使いますが、実際にはAIモデルは100%中立なわけでなく、特定の方向を強調した結果を出すことがあります。もしすべてが中立であれば、あなたのAIモデルはより困難な学習作業をせざるを得なくなります。
ほぼ100%中立的なモデルでは、有意な結果を導き出すにあたって、正確な学習データを作成するのに非常に長い時間がかかります。特定の顧客層にサービスを提供している場合、その顧客層のデータを使ってAIモデルを訓練することは非常に有益です。強化するポイントを踏まえた固有のバイアスを利用することで、AIモデルが導入当初から価値を提供できるようになります。
たとえば、18歳から25歳の若い女性をターゲットにしたファッション商品を販売している企業がAIモデルを使ったと仮定します。AIを搭載したレコメンデーションエンジンは、過去のマーケティングデータの学習によって獲得した固有のバイアスを、そのターゲット顧客グループの趣味嗜好データを踏まえて適用することで、さらなる購入を提案することができます。その後も顧客がより多くの反応をすると、AIがその顧客の好みを学習し、よりターゲットを絞った提案を提供することができます。
マーケターは、AIモデルの使用開始後、この固有のバイアスを使うことで効果を最大化することができます。使用しているAIモデルが学習データと同様の固有バイアスを持つデータを分析するのであれば、この固有のバイアスを利用して、パフォーマンスを改良できます。
AIバイアスをマーケティングに活かす
AIモデルの利用を開始している間に収集したデータを使用することで、より正確な意思決定を行うことができます。たとえば、レコメンドエンジンの開始直後は、AIモデルによる、あなたの顧客に類似しているという判断にもとづいて新しい商品を推奨します。しかし、その後、このモデルがあなたの顧客についてより詳しく理解することで、さらに精度の高い提案をすることができるようになります。
偏りのない100%中立のデータを収集するコストは上昇する一方で、データのバイアスを利用すればAI導入の初期コストを抑えることができます。たとえば化粧品の販促のために広告を使う際には、最初は様々な年齢層の女性をターゲットとして広告を展開すればある一定の収益を上げることができるでしょう。その後、販売量を増やし続けたい場合は、男性向けの提案ができるような機能を追加します。

AIやMLモデルを訓練するためにデータのバイアスを活用するのは有効です。しかしデータのバイアスが負の結果につながる可能性があることを認識することが重要です。
バイアスのあるデータを使い続け、途中で見直しをしないと、これ以上の改善は望めません。特定の年齢層に絞ってマーケティングを行い、一時期は非常にうまくいったとしても、しばらくするとボリュームが増えないことに気づくでしょう。このバイアスを克服するために何かをしないと、この特定のグループだけが最高のパフォーマンスを発揮していると考えて、彼らだけをターゲットにしてしまうので、キャンペーンは徐々に規模を拡大することが難しくなります。