新しいメディアを積極的に活用し、勝ちパターンも変化させよう
では、昨年9月に「XICA ADVA」をリリースしたサイカはどうだろうか。2020年、新サービスのリリース前に、既存サービスであるADVA MAGELLANの認知拡大と市場におけるポジショニング確立を戦略に置いた同社。これまでは、展示会の出展やイベントでの登壇、自社セミナーからリードを獲得する他、タクシー広告にも積極的に出稿してきた。しかしコロナ禍で、オフライン系施策の見直しは必至。また、企業のマーケティング課題も、「マーケティング予算を抑えつつ、適切に使いたい」へ変わった。
そこでサイカは、これまでの勝ち筋施策をすべてリセットし、出稿先メディアを新しく開拓していった。そして9月から10月にかけては、テレビと新聞を用いた大型プロモーションを実施する。「マゼラン部長で検索」のキーワードが話題となったテレビCMスポットを大量に投下した一方、日経新聞には「広告に、サイエンスを。」のメッセージで15段の一面広告を出稿。メディア選定では、認知の拡大・興味関心を得るためのリーチを重視し、メディア特性を鑑みながら、目的とクリエイティブを分けたという。大量リーチによる検索件数の向上が望めるテレビCMにはキャッチーさを、経営層やマネジメント層の購読が多い新聞では、信頼性と安心感、先進性を加味した落ち着いたトーンのクリエイティブを展開した。
その結果、サイト流入に対する貢献チャネルの5割近くをテレビCMが占め、集客単価を低く抑えられたそうだ(図表4-1/図表4-2)。


さらに、従来のターゲットだけでなく、代理店をはじめとした、これまで出会えていなかった顧客層ともマッチングした。「マーケティングの方向転換から、今まで機会ロスをしていたと気づけた。定説にこだわらず、常にベストな解を模索すべきだと強く認識しました」と高木氏は話す。
実はLIFULL HOME'Sも、新しいチャレンジとして、地方からのオンライン相談促進施策として「住まいの窓口」のテレビCMを放送している。従来の店舗相談ができなくなる中、新しい勝ちパターンを見つける投資は必要であるとの判断からだった。想定通りの成果にならなかったそうだが、「次につながる知見が得られた」と樋口氏。加えて、ユーザーが望む形でのメディア活用に積極的に挑み続けている。
両社の取り組みからは、先行きの見えない社会情勢下でも、ビジネスを前へ進める手段はあり、これまでの常識に囚われない視点と挑戦する意志が重要であるということがうかがえた。