ライブモニタリングでPDCAサイクルを短縮
次に、効果的なPDCAを実現するための方法が語られた。ネスレ日本ではメディアのPDCAにおいて3つのキーワードを重視しているという。それは(1)ライブモニタリング、(2)アドベリフィケーション、(3)効果計測だ。
まず、ライブモニタリングについて。同社では、広告出稿の効果を“リアルタイム”で把握できる体制を整えているという。
「数年前は、出稿から1ヵ月ほど経ってから広告会社から送られてくる、エクセルで作られた複雑なパフォーマンスレポートを確認していました。それではレポート内容を翌々月の施策にしか活用できませんし、上司からのレポート依頼に迅速な対応もできません。またレポートの数字に関しても、媒体レポートから正しく転記されているかがわからず透明性に欠けると感じていました」(小堺氏)
そこで小堺氏はセールスフォース・ドットコムの「Datorama」を導入。これによりImpressionやCPC、クリック数など、主要なパフォーマンス数値とその増減率がひと目でわかるようになり、データ分析におけるフレキシビリティが格段に向上したという。
また、ダッシュボードは広告会社の担当者にも共有し、広告効果を双方でリアルタイムに確認する体制を整えた。これにより、レポートを作成するリードタイムが削減され、キャンペーン期間中に意思決定とアクションを取ることができるようになったという。
アドベリフィケーションで効率を改善
2つ目に重視しているのはアドベリフィケーションだ。自社の配信する広告がどの面に配信され、本当に人が見ているのかを把握することは、ブランド毀損のみならず、効率改善のための絶対条件だという。
「あるDSPで、15秒の動画広告が3秒間しっかり見られた割合を計測したところ、全体の35%だったという結果が出ました。そこでIn-ViewRateを80%に設定変更したところ、完全視聴単価は設定前の44%まで下がったのです。アドベリフィケーションはリスクを防ぐという点だけではなく、効率の良い広告出稿を行うために必要不可欠な指標と考えるべきです」(小堺氏)
適切な効果計測でパフォーマンスを明らかにする
そして3つ目に重要なのが、効果計測だ。Google Analyticsや媒体レポートから読み取れる数値には限界があり、購買意向のリフトなどユーザーの態度変容を詳しく理解するための指標にはなり得ない。
コロナ禍でユーザーの行動は変わり、コンタクトポイントも増え続ける一方だ。しかもYouTubeやAmazonをはじめとする大手プラットフォーマーは情報を囲い込むため、広告主側がサイト内にタグを埋め込むことは難しい。媒体横断でのマーケティング予算の最適化が難しい状況が続いていた。
そこでネスレ日本では、MMM(マーケティングミックスモデリング)という手法を取り入れ、売り上げに影響するであろうあらゆる因子を収集、売上予測モデルを構築。広告が売り上げにどれぐらい寄与しているか導き出している。
以上、3つのPDCA方法を紹介した。とはいえ、自社だけでこれだけ多層的かつ幅広い取り組みを行うのは難しいだろう。小堺氏は「様々な強みを持つ外部のパートナーと適切にコラボレーションすることがメディアプランニングとPDCAサイクル改善に必要なポイント」だと述べ、セッションを締めくくった。